« 従業員満足度調査(専門家監修) | メイン | アンケート調査とテキストマイニング »

2021年4月12日 (月)

インターネット調査の課題

私は伊藤忠系シンクタンク(現:伊藤忠テクノソリューションズ)で15年ほどリサーチャーをやり、社内ベンチャー制度でマイボイスコムを起業して、インターネット調査に22年携わってきました。

前職のリサーチャーでは、郵送調査、訪問調査、電話調査、グルイン、会場調査、海外調査等を何でもやりましたので、インターネット調査とオフライン調査の両方を体験しています。

インターネット調査とオフライン調査の両方に携わった経験者も少ないと思いますので、現在のリサーチ市場の現状と課題について思い付くまま書いてみます。

インターネット調査がなかった1990年代までは、色々なオフラインの調査手法を組み合わせながらお客様のリサーチ課題に対応していましたが、インターネット調査が普及することでその時間とコストが大幅に削減されました。

郵送調査では関連する統計や文献を集めて、日経テレコンで関連する記事なども収集して、お客様とも何度も直接打ち合わせをしながら調査を設計し、調査票も良く揉んでから印刷し、ラベル作成、発送、回収、チェック、パンチ、集計、レポート作成という手順で進めていました。

そのため、300件ほどの回収でも3ヵ月ほどの日数と、4~500万円ほどの経費がかかりました。

それが現在のインターネット調査では調査票設計からレポート作成で、30問、1,000件の回収でも3週間で100万円ほどですので、時間も費用も郵送調査の1/4位まで下がっています。

お客様にとっては、より安い経費で、早く、大量のデータで調査ができるので利便性が4倍も良くなったといえます。

しかし、リサーチ会社の立場では、お客様と課題や調査内容をしっかり相談する時間もなく、とにかく沢山の案件を効率的に回さないと採算が合わない。という厳しい環境で慌ただしく動かざるをえないというのが実感です。

その結果、お客様からはリサーチ会社の技術力が低下したとか、リサーチをしても意思決定に役立たなかった、という評価が増えているのは両者にとって不幸なことです。

日本のインターネット調査は世界で1番安いそうです。それは、リサーチ会社がリサーチの自動化による、早さと安さの過当競争をして来た結果です。

インターネット調査で大量のデータの回収や、双方向性の回収や、動画やサイトの活用、回答導線の制御、リッチなテキストの回収も素晴らしいことです。

しかし、これからは早さと安さと装置化が中心の競争でなく、意思決定に役立つリサーチサービスを目指した質的な改善が重要になると思います。

それは1部のリサーチ会社だけでは変えられませんし、お客様の理解も必要ですが、もう少し余裕のある時間と予算を設けて、もっとクライアントとリサーチャーがしっかり相談できて、よく考えた調査設計でリサーチができる環境に戻して行くことが必要ではないでしょうか。

当社は創業して23年で従業員も40人の小さな組織ですからリサーチ市場を変える力はありませんが、よりお客様に役立つリサーチサービスが提供できるように、自社で出来ることには全力で取り組んで参ります。

新年度もどうぞよろしくお願いいたします。

マイボイスコム株式会社

代表取締役社長 高井和久

https://www.myvoice.co.jp/

 

コメント

コメントを投稿

プロフィール

フォトアルバム

Takai kazuhisa

伊藤忠系シンクタンクの社内ベンチャーで、1999年にネットリサーチ会社のマイボイスコムを立ち上げて社長をやっています。会社を作ることより続けること、良い会社を目指して経営することの難しさ日々感じながら奮闘している毎日です。夜は神田や神保町あたりの居酒屋に出没し、休日は自然散策やアウトドアを楽しんでいます!