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2011年10月

2011年10月29日 (土)

インターネット調査業界再編の主役

ネットリサーチは1998年頃から始まった新しいサービスです。それから暫くは小さな市場でしたからネットリサーチ会社の多くはベンチャー企業でした。

2005年に当社がベンチャーキャピタルから投資を受けた時には、インフォプラント、マクロミル、インタースコープの3社と比較した資料を作って欲しいと言われました。確かこの時点で1番売上が大きかったのはインフォプラントさんだったと思います。

しかし、その時に比較したインフォプラントさんとインタースコープさんは、昨年度からすべてマクロミルさんに吸収される形になりました。

インフォプラントさんがヤフーさんの子会社になったのは2005年10月で、インタースコープさんは2007年2月に買収され、その年の7月に2社が合併して「ヤフーバリューインサイト社」が出来ました。

そして、このヤフバリューインサイト社のリサーチ事業が、2010年8月にマクロミルさんに吸収されて、マクロミルさんの筆頭株主がヤフーさんになったというのが業界再編の流れです。

ヤフーさんは2002年10月にインテージさんと「インテージインタラクティブ社」という合弁会社を作って、ネットリサーチに取組んでいましたが、こちらの合弁は最近解消されました。

これだけ大きな業界再編が2005~2010年の5年間で進んだ訳ですが、改めてこれまでの流れを見ると、ネットリサーチ業界再編の主役はネットビジネスの雄であるヤフーさんだったことが分ります。

ネットリサーチは「インターネットビジネス」と「リサーチビジネス」の2つの顔を持っていますが、「インターネットビジネス」主導の色合いが強い業界再編だと言えるのではないでしょうか。

2011年10月15日 (土)

インターネット調査黎明期の品質基準

私は最近のネットリサーチ会社のリサーチ対する取り組み方や、品質基準に問題があるのではないかと感じることがよくあります。

どうすれば良いデータを集められるか、どんな調査設計で、どんな謝礼で、どの位の回収時間で、どの位の回答頻度までは問題ないか、データークリーニングは最低どこまでやるべきか、そんな品質基準やそれを守るためのガイドラインが必要なのだと思います。

でも実際はその様な基準やガイドラインが曖昧なままに、早さや、安さ、システムの利便性やモニター数と、営業力の激しい競争の世界に移ってしまいました。

その結果が、以前紹介した「経営判断の寄与度の大幅な低下トップボックスが19%9%)」や、「定量調査の低い満足度満足度49%)」の調査結果に現れているのでしょう。

ネットリサーチの黎明期に、従来型調査会社とネットリサーチ会社がしっかり議論を行い、品質基準とガイドラインを作り、それを守ることがリサーチ業界の常識になっていたら、もっとクライアント様にご満足いただけるサービスに育つことができたのではないかと思います。

少なくとも平石さん(旧インタースコープ)や、大谷さん(旧インフォプラント)、そして私も含めて当時のネットリサーチ会社のベンチャー社長は、その必要性を強く感じていて、何とかしようと前向きにもがいていたことは事実でした。

しかし、そのもがきが実る前に、インフォプラントさんと、インタースコープさんはヤフーさんに買収されてなくなりました。

そして、それを契機にベンチャー会社同士が競い合い、ある面では仲間意識を持って、ネットリサーチ業界を良くして行こうという機運も消滅してしまった感があります。

「リサーチサービス」は無形で見えないものです。それだけに品質を担保するための基準やガイドライン、そして認証制度等があるべきだと思いますが、現時点でそんな動きは聞こえてきません。

最近の市場動向やユーザー調査の結果を見ると、平石さんや大谷さんがまだ業界にいて「インターネットリサーチ研究会」があのまま続いていたらなあ、なんて思ったりしています。

2011年10月 8日 (土)

如何わしい調査手法?

1998~2003年の黎明期は、リサーチ業界の中では「ネットリサーチは問題の多い調査手法」で、ネットリサーチ会社は「如何わしい会社」と見られていました。

そして、ネットリサーチ会社は新興のベンチャー会社ばかりでした。

当社は1998年の創業ですが、その頃にインフォプラントさんや、インタースコープさんもスタートしていました。現在大きくなっているマクロミルさんや楽天リサーチさんは2000年の設立で、クロス・マーケティングさんは2003年の設立です。

そして、その頃に旧インタースコープの平石社長や、旧インフォプラントの大谷社長が中心になって「インターネットリサーチ研究会」という集まりを作り、今後のネットリサーチの発展のために研究したり、品質のガイドラインを作ったり、啓蒙活動をやろうと動き出しました。

これも従来型調査会社の集まりである日本マーケティングリサーチ協会では相手にしてもらえないからでした。それなら、自分達でネットリサーチの研究を行い、社会に役立つ産業にしていこうというのが新興ベンチャー会社の意気込みでした。

ある時に、従来型リサーチの世界とネットリサーチの世界の軋轢をすごく感じる出来事がありました。

2003年か2004年だったと思いますが、「インターネットリサーチ研究会」のフォーラムが中野で開かれました。この頃にはネットリサーチへの関心も高くて、会場には300人位が集まっていました。

この会場で、統計数理研究所のある先生が、会長であった平石さんに向かって「ネットリサーチは全く意味のないものである。ネットリサーチの統計的な根拠をちゃんと説明しろ。君達にはそれを説明する義務がある。それもなければこんな研究会はナンセンスだ!」と厳しく叱責されました。

その先生は長年リサーチの学術的な研究を行い、正しい調査のあり方を追求してきた方だけに、ネットリサーチが理論的な検証なしに拡大するのが我慢ならなかったのに違いありません。

平石さんが冷静に堂々と対応してくれたため、研究フォーラムは無事に終わりました。

でも自分達は1つの調査手法として社会に役に立つと思って、色々と検証しながら、良いサービスにするためにみんな頑張っているところなのに、そんな全否定の言い方はないよなあ。と思いました。

フォーラムが終わった後で、平石さん、大谷さん、と私の3人のベンチャー社長で飲みに行きました。

「俺達だって頑張っているのに、あんな言い方をしなくてもいいじゃないか。」と悔しい思いを共有しながら、3人で赤ワインを2本ほど空けたのでした。

2003~2004年頃は、まだネットリサーチはこんな風に見られていましたし、ネットリサーチ会社と従来型リサーチ会社の認識の溝も大きかったように思います。

〇インターネットリサーチ研究会http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0213/ires.htm

2011年10月 1日 (土)

インターネット調査の営業

当社がインターネット調査を始めた1998年から5年間位は、お客様から「インターネット調査って何?」、「インターネットでリサーチなんかやって大丈夫なの?」、「代表性に問題はないの?」と必ず聞かれました。

でもそれに対して「インターネットでリサーチをしても大丈夫なんです。」とは言い切れません。

ただ、自主調査で色々とデータを取って分析してもちゃんとした傾向値は出ますし、ローデータの整合性や、FAに書かれたコメントを読むとしっかりしたものが多いので、役立つ情報だという確信はありました。

それでも、ネットユーザーに限定しているパネル自体がどの程度、リサーチの結果に影響しているかは分かりませんので、自主調査レポートなどをお示ししながら、「お役に立つデータが取れると思うのですが、お客様の調査テーマに合うかどうかはやってみないと分かりません。」と言うしかありませんでした。

多くのお客様はトライヤルで小さな調査を試しに実施したり、郵送調査と並行してインターネット調査をやって、その2つのデータを比較検証したりしていました。

そして、多くのお客様からは、意外にしっかりした分析ができる、郵送調査ともあまり変わらない、というご評価をいただけましたし、それでこの金額と時間であればいいね、というご意見もいただけました。

もちろんインターネット調査で良いテーマと、インターネット調査ではやらない方が良いテーマもありますが、インターネット調査で役立つ分野があるということは確かだと、色々な調査のお手伝いをして感じることは出来ました。

インターネット調査の黎明期とはこんな感じでした。

そんな「本当に大丈夫なの?」というお客様の懸念を、ベンチャー企業のネットリサーチ各社が、それぞれの営業の場面で試行錯誤しながら払拭していたのが1998~2003年の状況でした。

ちなみに当社もスタートして3年くらいの回収率は70%もありました。謝礼も今より5倍くらいは出していましたし、回収時間も4、5日は取っていました。

そいう面では質的な市場環境に関しては、今より恵まれていたのかもしれません。

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Takai kazuhisa

伊藤忠系シンクタンクの社内ベンチャーで、1999年にネットリサーチ会社のマイボイスコムを立ち上げて社長をやっています。会社を作ることより続けること、良い会社を目指して経営することの難しさ日々感じながら奮闘している毎日です。夜は神田や神保町あたりの居酒屋に出没し、休日は自然散策やアウトドアを楽しんでいます!