2012年11月 8日 (木)

ネットマイル社がインターネット調査を譲渡

ネットマイルさんがネットリサーチから撤退し、ネットリサーチ事業をミクシィに譲渡することが決まったとの発表がありました。

事業譲渡は2013年1月を予定していて、ネットマイルさんがリサーチシステム「ネットマイルリサーチ」を新設分割し、ミクシィさんが新設会社の全株式を取得するのだそうです。

同社は2001年からネット上の共通ポイントプログラムの「ネットマイル」を使ったプロモーション事業を始めて、2005年からネットリサーチ事業(ネットマイルリサーチ)にも取組んでおられましたが、これからはポイントのプロモーション事業に特化していくということなのでしょうか。

当社もプロモーション系のアンケートのお引合があると、リサーチ会社の当社ではできないため、ネットマイルさんにご紹介したりしていました。

何度かお取引もあり、顔見知りの方もいましたので、若干寂しい思いもするニュースでした。

〇ネットマイル社、ネットリサーチ事業をミクシィに譲渡

http://biz.netmile.co.jp/news/press_2012/press_release121102.html

2012年11月 1日 (木)

缶コーヒー調査と喫煙調査のマッチング分析

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「2テーマ結合分析(たばこの喫煙調査×缶コーヒーの飲用調査)」のご紹介
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マイボイスコムには1998年7月から毎月実施している自主アンケートが約1,700テーマあり、その回収数が1万件超と大規模であるため、2テーマの回答データを結合した分析にもご利用頂くことができます。

こちらの分析で用いたデータは、「缶コーヒーの飲用に関する調査(第3回)(2010年3月実施、回答数13,804人)」と、「たばこに関する調査(第3回)(2010年7月実施、回答数13,636人)」になります。

2テーマに答えているモニターが2,452人おられましたので、これらの回答データを結合し、当社モニターが登録している32項目の自陣属性も付けて分析を行いました。

缶コーヒーを毎日1本以上飲む方は12%ですが、男性喫煙者に限ると31%と平均より2.6倍も高くなっています。男性禁煙者の16%、男性未喫煙者の13%と比べても高く、「喫煙」と「缶コーヒー飲用」の関連性が見られます。

また、喫煙者は男女ともに「いつも同じブランドを選ぶ」比率が高く、全体では18%ですが、男性喫煙者の27%、女性喫煙者の25%がいつも同じブランドを飲んでいることも分りました。そして、男性の未喫煙者では他の階層より「カフェ・オ・レ」好きという傾向もありました。

たばこも缶コーヒーも刺激のある嗜好品という共通項があるからなのか、ライフスタイルに関連しているのかは分りませんが、利用実態には関連性が見られる結果になりました。

「たばこの喫煙×缶コーヒー飲用の分析事例」は、下記のページでご覧下さい。

〇2テーマ結合分析の事例「(たばこの喫煙)×(缶コーヒーの飲用)」
https://myel.myvoice.jp/user_data/pdf/case_04.pdf

 〇缶コーヒー飲用に関するアンケート調査(第3回)

http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=14001

〇たばこの喫煙に関するアンケート調査(第3回)

http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=14413

 

Q 喫煙の経験〔あなたは喫煙の経験がありますか〕

 
  たばこ
  「現在吸っている」が21.4%、「過去に吸っていたが、現在は吸っていない」が23.8%で。これらをあわせた喫煙経験者は45.2%です。

これらの異なる調査データを、モニターのIDで紐付けることで、2つのカテゴリー間の関連性を見るのが、アンケートデータベース(MyEL)の「データ結合サービス(データマッチングサービス)」です。

2テーマの結合データは6万円で提供していますので、関連性が気になる商品カテゴリーがありましたら、MyELの結合データを使って分析してみて下さい。

 

〇MyELデータのマッチング(データ結合)サービスの詳細はこちらにあります。
http://myel.myvoice.jp/user_data/rate_table.php

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2012年10月20日 (土)

バーベキュー大会

P1030861 P1030863マイボイスコムでは、毎年秋口の土曜日に社員が集まって屋外バーベキュー大会を開いています。

いつもは郊外でやっていますが、今年はお台場の「東京ダイナシティ」の屋上にあるバーベキュー広場での開催でした。

フジテレビのビルを見ながら屋外でバーベキューというのも不思議な感じでしたが、30人ほどの社員と、来春入社予定の学生さんも加わって、青空の下で楽しい時間を過ごすことができました。

リサーチの世界は毎日がオフィスでのデータやレポーティングとの戦いです。

各自が色々と考えながら、調査設計や、調査票作成、実査管理、集計、分析、レポーティング等に取り組んでいるため、オフィスはとても静かなことが多いです。

でも休みの日にこの様な野外で集まると、普段のオフィスとは全く違った賑やかな雰囲気になり、いつもとは違う盛り上がりになるのが面白いと感じています。

会社は働くために集まった集団ですが、話しやすく働きやすい職場を作るには、この様な自由な雰囲気でのコミュニケーションが大切なんですよね。

当社ではキックオフパーティや忘年会など、四半期に1度は全員でパーティをやっていますが、休日の屋外でのバーベキューは、また違った感じで楽しめるのでちょっと気に入っています。

 

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

 

2012年9月10日 (月)

ノンアルコールビールのキキミミ調査

2011年1月と2012年1月に、当社が自主企画で実施した「ノンアルコールビール調査」のデータで、キキミミ分析を行ってみました。

2011年の調査では、サントリーの「オールフリー」が「聞き耳」のポジションにあり、今後の成長が示唆される結果となりました。

そして、1年後の2012年の調査で同じキキミミ分析を行ったところ、「オールフリー」のむれ耳(≒マジョリティ)の主飲用銘柄シェアが1.6倍に成長し、実際に「オールフリー」は販売額も市場シェアも大幅に伸長するヒット商品になりました。

また、「オールフリー」は2012年には「そら耳」の領域に入って成熟に進みつつあり、変わって「キリン休む日のAlc.0.00%」が、まだ小さい存在ながら「聞き耳」の評価が上がりつつあるという市場の変化も捉えることができました。

「聞き耳」が支持するブランドは成長し、「そら耳」が支持するブランドは衰退する可能性が大きい、というのがキキミミ分析の基本的な考え方ですが、その理論を裏付ける結果になっています。

自社のブランドが近い将来にアップトレンドになるのか、ダウントレンドになるのか、それを「キキミミ分析」で事前に捉えることで、早い段階で次のブランド戦略を取れるのが「キキミミ分析」を使うメリットです。


ノンアルコールビールの調査レポートは、下記ページからダウンロードできますのでご覧下さい。

また、御社の商品ブランドでも、同様の「ブランド将来診断」ができますので、もし興味があれば下記担当者までお問合せ下さい。「キキミミ分析」が皆様のブランド戦略に役立てば幸甚です。

 

〇「キキミミ分析事例(ノンアルコールビール編)」のレポート
http://www.myvoice.co.jp/news/pdf/33voice_summary1208.pdf

▽お問合せ先
(キキミミ担当)  第2リサーチチーム 森
(電話番号)     03-5217-1911 (Eメール) otoiawase@myvoice.co.jp

 〇キキミミ分析のサービス概要 http://www.myvoice.co.jp/menu/33-voice.html

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2012年8月27日 (月)

キキミミ分析の国際会議での受賞

7月にソウルで開催されたマーケティング関連の国際学会(2012 Global Marketing Conference at Seoul)で、慶應義塾大学の清水聰教授が「キキミミ分析」の研究発表をして、400件の研究発表から6件しか選ばれない「Best Conference Paper Award」を受賞したという嬉しいニュースがありました。

受賞された研究発表は、当社が構築運営で協力している「聞き耳パネル」を使ってある商品ブランドの評価を行ったところ、シェア、購買者、コミットメント、意思決定段階、それに中心的か周辺的か、という視点でのブランド評価の得点は同じではないが、それらを横断的に眺めると、強いブランドと弱いブランドが見えてくることなどを紹介した内容だったと伺いました。

「キキミミ分析」は清水先生の研究に、5年前から読売広告社様と弊社が協力させていただき、色々なデータ検証を行いながら研究開発を進めてきたものです。その研究成果がこの様な国際会議でも高く評価されて、弊社としてもとても嬉しく光栄に感じています。

誰が買っているのかに注目してブランドの将来診断を行う「キキミミ分析」は、とてもユニークな考え方で、これからのブランド戦略に役立つ手法になると思います。

これからも先生の研究のお手伝いをしながら、読売広告社様とも協力して、この新しくて魅力的なブランド分析手法を、実務の面でも広げて行きたいと考えております。

「キキミミ分析(聞き耳調査)」に興味のある方は、下記サイトをご参照下さい。

〇清水先生受賞のお知らせ

http://www.gcoe-econbus.keio.ac.jp/cat4/

〇2012 Global Marketing Conference at Seoul

http://www.kamsconference.org/2012/index.html

〇キキミミ分析のサービス概要

http://www.myvoice.co.jp/menu/33-voice.html

 

2012年7月26日 (木)

ロンドンオリンピックに関するアンケート調査

いよいよ、明日からロンドンオリンピックが始まります。

そのため当社でも7月の自主調査で「ロンドンオリンピック」を取り上げてみました。

オリンピックの直前調査は、前回の北京オリンピック、前々回のアテネオリンピックでも同様の設問で行っていますので、その3回の調査結果を比較しながら見るのも面白いかもしれません。

私が気になったのは各オリンピックの関心度の変化です。

今回のロンドンオリンピックの関心度は53%で、前回の北京の54%と変わりません。しかし、前々回のアテネの時は72%もありましたので、アテネと比べると関心度が19%も低下しています。設問項目も同じです。これは何故なのでしょうね?

アテネが特別だったのか、有望な選手や競技の差なのか、日本社会の停滞した雰囲気が影響しているのか、このあたりも詳しく調べてみると興味深い結果がでるかもしれません。

 興味のある競技は、1位サッカー、2位体操、3位競泳、4位陸上で、日本のメダルを期待する競技は、1位体操、2位競泳、3位柔道、4位サッカーとなっています。そして、日本の金メダルの数は5~6個が25%で1番多く、次いで、3~4個の22%、7~8個の16%と続いています。

JOCのオフィシャルパートナー企業の認知度は、コカ・コーラが45%でダントツに高く、2位アサヒビール22%、3位マクドナルド20%、4位アシックス18%、5位トヨタ自動車13%という順番でした。

どの競技で日本選手が活躍し、金メダルがいくつ取れるか楽しみです。これからの日本選手の活躍を期待したいですね。

そして、オリンピックの熱気と感動が、日本社会にも元気を与えてくれると良いですね。

頑張れ、ニッポン!!

①「ロンドンオリンピック」に関するアンケート調査  2012年7月実施

http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=16817

 ②「北京オリンピック」に関するアンケート調査  2008年7月実施

http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=12002

③「アテネオリンピック」に関するアンケート調査  2004年7月実施

http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=7203

 

1.ロンドンオリンピックの関心度
〔あなたは「ロンドンオリンピック」にどの程度関心がありますか〕
  ロンドンオリンピック
3.興味のあるオリンピック競技
〔(観戦する予定の方)あなたが興味のある競技はどれですか(複数回答可)〕
  ロンドンオリンピック
6.JOC(日本オリンピック委員会)オフィシャルパートナー企業の認知
〔以下の企業名・ブランド名の中で、JOC(日本オリンピック委員会)のオフィシャルスポンサーになっていることをご存知のものをすべてお選びください(複数回答可)〕
 

ロンドンオリンピック

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

2012年7月 7日 (土)

パネルの基本属性の乖離

当社のパネルは約36万人で、回収率は24時間で32%、48時間で37%、72時間で40%です。しかし、1年に1度も回答をしていない非アクティブモニターも2~3割おられるため、最大回収数は約10万人となっています。

〇回収率検証調査の結果

http://www.myvoice.co.jp/feature/quality.pdf

10万人の回収力があれば、一般的な調査には十分に対応できます。

しかし、かなり出現率の低い対象者の調査や、回答者属性を絞った調査、そして、フレッシュサンプルでの継続調査の場合は、自社パネルで対応できないケースも出てしまいます。

その場合は、クライアントの了解をいただいて、他社のパネルサプライを使っていて、資本提携先のインテージさんとは詳細なパネル検証をして、回答データに問題がないと双方で確認しています。

そして、今回もっと大きなパネルも使えるようにするため、2社のネットリサーチ会社にパネル検証をお願いしました。全く同じ属性の対象者に、同じタイミングで、同じ設問を聞く調査データの比較です。

その結果、A社のパネルはほとんど当社と同じ回答傾向になりましたが、B社のパネルは「買い物の意識や行動」の回答が、何故か1、2割高めに出てしまいます。

その原因を探って行くと、性別、年齢との基本属性が登録と回答で15%も乖離していることが分りました。

男性の回答が女性であったり、20代の回答が30代だったりする比率が15%もあるのですから、回答傾向が1、2割ずれても仕方がないことでしょう。

今のネットリサーチ市場ではこんなこともおきています。始めてのネットリサーチ会社を使う場合は、調査票に性別と年齢の設問を入れて確認することをお勧めします。

 

(補足)パネルは基本属性のズレが全くないことはありません。間違って別な家族が答えたり、セキュリティのため年齢を1、2歳ずらしている人もいるようです。当社も4%、A社も5%の乖離がありました。

 

2012年6月23日 (土)

パネルによる回答水準の違い

当社ではあるクライアントのお仕事で、新サービスの浸透度を継続的に追いかける調査をやっています。

四半期に1度のペースで約2,500件の回収を行う調査で、より厳密に浸透度を測るためフレッシュサンプルでの回収計画となっています。

しかし、フレッシュサンプルでの継続調査は、しばらくすると特定階層のサンプルが足りなくなるのが頭の痛いところで、クライアントの事前了解をいただいて今回は外部パネルを使うことになりました。

今回の調査結果でサービス浸透度は約50%でした。前回よりもだいぶ浸透率が高まってきたという結果です。

しかし、その報告をした翌週にお客様から担当者に連絡が入りました。別テーマで従来型調査会社に調査を頼んでいて、そこでもネットリサーチをやることになったので、参考までに同じ浸透度の設問を入れてもらったのだそうです。

するとこちらの浸透度の調査結果は30%で、当社の結果より20%も低くなったと言うのです。

お客様としては、同じ条件の対象者に、同じネットリサーチで、同じ設問で聞いたのに、何故マイボイスコムは50%で、他社は30%の答えが出るのか??、と思われるのは当然のことです。

今回から外部パネルを使ったこともあり、何か問題があったのではないかと緊急会議を開いて、1)当社のパネルで同じ調査をやってみる。2)先方の回答データをいただいて検証する。の2パターンで原因を探ることにしました。

そして、すぐに当社のパネルでも同じ調査を行ったところ、こちらの浸透度も約50%という結果が出て、お客様からも「やはりこの結果で良かったのですね。安心しました。」というお言葉をいただくことができました。

新サービスの浸透度が50%と30%では全く意味が違います。それが同じネットリサーチという調査手法で出てしまうのが恐いところです。

回答結果が極端に低くなる原因としては、

1)設問数が非常に多い調査票で回答者の付加が重すぎた。

2)短時間回収で特定の特性のモニターのみ答えていた。

3)そもそもパネルのクオリティが悪い(真面目に答えてくれていない)。

等が考えられます。

しかし、他社のパネルの実態や回収の状況も分からないため原因が特定できず、後味の悪い思いだけが残りました。

従来型調査会社が使ったのはある大手のネットリサーチ会社です。

それなのに依頼するネットリサーチ会社によって、こんなにも大きな調査結果の開きが出てしまうことが、現在のネットリサーチ業界の問題を表していると思います・・・

 

2012年6月16日 (土)

慶應大学 清水ゼミの発表会

120614_1428~001慶應大学の清水ゼミの発表会に招待されて行って参りました。

清水聰教授とは長いお付き合いで、先生の研究テーマの調査や、「聞き耳・死神分析」のパネル構築や検証等で研究のお手伝いをさせていただいています。

清水先生が仰っている「欧米研究の検証ではなく、日本発のマーケティング手法を創りたい」という考えにはとても共感しますし、先生の様な最先端の研究者と連携することで生まれる価値もあるので、大変ありがたいお付き合いだと感じています。

その先生からゼミ生にできるだけ実践的なデータで演習をさせたいというご相談があり、昨年度からアンケートデータベース(MyEL)のデータを、ゼミの演習に使っていただくことになりました。

 

清水ゼミはとても学生に人気があるそうで、教室には3年生20人、4年生20人の優秀そうな学生さんが集まっていました。

今回の演習は3年生が5グループに分かれて、MyELデータ等を使って具体的な施策まで考えて発表するというものです。今年はMyELの2つの調査テーマの結合データを使った分析に挑戦していました。

コンビニレジ横調査とコンビニ利用調査のデータを使っての「エリア別のレジ横提案」や、牛丼チェーン調査と外食調査のデータでの「吉野家の新業態提案」、コーヒーショップとチルドコーヒーのデータから「スターバックスの販売戦略」などどれもユニークで具体的な提案ばかりで感心しました。

120614_1820~001皆さん優秀な学生さんであることと、好きなデータで自由にやらせてみるという清水先生の方針や明るく気さくなお人柄もあって、とても楽しく充実したゼミでした。

マーケティングを学ぶ学生さんにとっては、自分達で好きなデータが自由に選べて、色々なツールで分析でき、具体的な施策まで考えられる演習は、楽しくて仕方がないのかもしれませんね。

そして、私もMyELのデータが大学生の実践的な勉強の役に立つことと、2テーマの結合データを使えば、こんな風に色々な仮説検証ができるのだなあと改めて実感することもできました。

最後に全員からお礼を言っていただいて、慶応大学の校章が入ったお洒落なビスケットまでいただいて帰ってきました。

清水ゼミの皆さん、とても楽しく有意義な時間をありがとうございました!

 

〇慶応大学 清水聰研究会     http://keioshimizu.web.fc2.com/

〇アカデミック調査の実績      http://www.myvoice.co.jp/academic/index.html

〇アンケートデータベース(MyEL) http://myel.myvoice.jp/

 

 

 

2012年5月26日 (土)

1人1人のモニターの存在

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一生懸命介護された人ほど、その役割が終わってしまった時
「ああすればよかった、あれもしてあげればよかった…」そういうお話をよく聞きます。
その度に、家族に対する思いは終わる事は無いと痛感します。

逆の立場からの話です。私は24時間要介護で、自分の母と夫、二人の支えで生活しています。
闘病生活は人生の半分を超えて、二人がかりの介護になってからは15年が経過しました。
本心を母に伝えるのは難しい、親子だからこそ。そこで夫に事あるごとに伝えています。
『日常生活の中で、毎日の介護の中で、万が一は仕方のない事。
そのことで決して悔やまないで欲しい。
ここまで穏やかな生活が出来た事に感謝してるから…
ママには貴方から伝えて』

お母様も同じだったのではと、ふと思って。
老後や介護生活は色んな暮らし方、選択肢があります。
そんな中で実の娘であるXXさんと暮らした時間は、
どんなに楽しくて幸せだったか。
強い繋がりと深い愛情があるからこそ、ずっと後悔が付きまとう。
決してきれいに無くなる事はないのかもしれません。
でもいつか、思い出すのは二人で過ごした楽しい時間ばかり…
そんな時が来る事を願っています。
私自身が家族に対してそう願っているのでつい、横から失礼しました。

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こちらはモニター同士での意見交換のために、当社が設けている「フォーラム」での発言です。

亡くなられたお母様の介護について、もう少し何かできたのでは、と後悔をしている方に対するコメントでした。

そして、このコメントを書いた方は難病で、もう20年以上も寝たきりでご家族の介護を受けておられるのだそうです。それなのにいつも、自然で、穏やかで、前向きで、人に対してとっても思いやりのある優しいコメントをされるので、管理人の私も強く心を打たれています。

ネットリサーチはとても便利な調査手法です。

何百人、何千人、何万人という方々のご意見を、2、3日ですうっと集めることができます。

しかし、訪問調査や会場調査、郵送調査等よりも便利な分だけ、モニターのありがたみが実感しにくく、回答者の顔が見え難い調査手法なのかもしれません。

でも、生活者の意見や要望をしっかり汲み取り、それを社会に活かすには、リサーチャーが1人1人のモニターの個性や、生活、人生を感じながら、リサーチに取り組むことが大切なのだと思います。

ネットリサーチの便利な環境の中で、リサーチャーが1票1票の大切さを認識し、1票の回答の後ろには色々な個性や生活のある「人」がいることを実感しながら働くにはどうしたら良いかを、これからも考え続けていくつもりです。

 

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2012年3月24日 (土)

従来型リサーチ会社の業務縮小

当社では先月から技術力向上を促進するため、リサーチャーの経験者採用を進めています。

今回の求人には思った以上のご応募があり、リサーチの技術と経験をお持ちの方に絞って面接をしているところです。

当社ではこれまでにも年に1回程度は中途採用をしていますが、今年は「従来型リサーチ会社」に勤務しているリサーチャーの応募が多くて驚いています。

そして、彼らから話を伺うと「現在の会社がリサーチ業務を縮小するので」とか、「会社がネット広告会社に買収されて、真面目にリサーチをやる環境でなくなった」とか、「会社がリサーチからコンサルに業態を変えるというので」、といった転職理由が聞かれました。

これは推測ですが「従来型リサーチ会社」も、リーマンショック後の大不況で経営環境が厳しいということもあるでしょうが、もう1つは急速にネットリサーチにシフトしたため、これまで収益源だった実査が外注になり採算が厳しくなっているのかもしれません。

しかし、リサーチ市場の品質は、長年の経験を持つ従来型リサーチ会社さんが、コツコツと真面目に対応することによって築いて来たものです。優秀なリサーチャーはそういう会社にこそ沢山おられます。

それを支えるリサーチ会社が業務を縮小したり、撤退したりというのは、日本のリサーチ市場にとって大きな痛手だと思います。

リサーチ業界がパネル力と、システム力と、営業力のある大きなインフラ方のネットリサーチ会社だけになったら、クライアントさんの細かい要望や、高度な要望には応えられず、更にクライアントの満足度や経営判断の寄与度が下がってしまうのではないでしょうか。

リサーチにはインフラも必要ですが、技術と経験を持ったリサーチャーが粘り強く対応することで始めて実現できることも沢山あります。そういう職人的な機能が崩壊してしまうことがないように願っています。

そして、当社はたとえ経営効率が悪くても、真面目にコツコツ頑張る人的サービスでも評価されるリサーチ会社を目指して努力を続けたいと思います。

2012年3月10日 (土)

日本消費者行動研究学会(JACS) 公開セミナー

日本消費者行動研究学会(JACS)の第2回公開セミナーが、3/5(月)に早稲田大学で開かれました。

120305_1307~001JACSさんは毎年2回、東京と地方で大規模なコンファレンスを開催していて、こちらはもう43回も続いていますが、「公開セミナー」は昨年会長の守口先生(早大教授)の発案で始めて、今回でまだ2回目だと伺いました。

今年の公開セミナーのテーマは「ブランド戦略論を展望する」というもので、3人の大学の先生と、2人の企業のマーケティング実務による講演でした。

今年の企業の公演者は、グーグルのマーケティング本部長の岩村様と、サントリー酒類宣伝部長の和田様です。

大学の先生方の学術的な研究の報告も興味深い内容でしたが、グーグルさんとサントリーさんの具体的なマーケティングの取組を詳しくお聞きできたのは、とても面白くて勉強になりました。

産学の両方から、マーケティングの理論と実戦の話しが聞ける機会は貴重です。

昨年の第1回の公開セミナーも聞かせて頂きましたが、「消費者行動研究コンファレンス」よりもこちらの方がレベルも高く、発表内容もぎゅっと圧縮されていて勉強になると思います。

こんなに素晴らしいセミナーが、学会会員や学生は3,000円、一般の方でも5,000円で聴講できるのですから大変お得ではないでしょうか。

JACSの公開セミナーは間違いなくお勧めですよ!

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■<第二回JACS公開セミナー開催のご案内>
■『ブランド戦略論を展望する ~理論と実務の現在と未来~』
http://www.jacs.gr.jp/announcement/index.htm

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13:00-13:05 会長挨拶: 高橋郁夫(日本消費者行動研究学会会長・慶應義塾大学商学部教授)
13:05-13:10 企画者解題
13:10-13:55 岩村 水樹(グーグル(株)執行役員 マーケティング本部長)
「グーグルのブランド戦略」
14:00-14:45 久保田 進彦(東洋大学経営学部教授)
「ブランド・リレーションシップ研究の現在」 配布資料(公開版)
14:45-15:00 休憩
15:00-15:45 青木 幸弘(学習院大学経営学部教授)
「ブランド・エクイティ研究の展望」 配布資料(公開版) 参考文献
15:55-16:40 和田 龍夫(サントリー酒類(株)宣伝部長)
「サントリーウイスキーのブランド戦略」
16:45-17:15 田中 洋 中央大学ビジネススクール教授
「ブランド戦略の今後」 配布資料(公開版)
17:15-17:45 Q & A

2012年1月14日 (土)

キキミミ調査 33-Voice (ライフスタイル調査)

新年の業務が始まりました。今年もよろしくお願いいたします。

さて、当社のネットリサーチは、専門リサーチャーの一貫対応、パネル管理とデータクリーニングの徹底、アンケートデータベースの提供、独自のリサーチメニューの提案、を特長としています。

その中で、「独自のリサーチメニュー」として、ライフスタイル系の分析メニューの開発に力を入れてきました。当社のライフスタイル分析には「高感度モニター調査(Hi-voice)」、「感性価値調査(Mind-Voice)」、「キキミミ調査(33-Voice)」の3つがあります。

それぞれ面白い分析ができるので追々紹介したいのですが、今日は最近注目されてきた「キキミミ調査(33-Voice)」について少しだけ紹介させていただきます。

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◆ブランド将来診断・キキミミ調査「33-Voice」のご紹介
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「キキミミ調査(33-Voice)」は、慶応義塾大学 商学部の清水聰教授が考案した「聞き耳・死神研究」の成果をもとに、当社と読売広告社さんが参加して、5年ほど前から研究開発を進めてきたものです。

そして、3者で色々な実験調査やデータ検証を行い、この「聞き耳・死神研究」の考え方は、ブランド将来診断に大きく役立ちそうだという結論になり、2010年6月から「キキミミパネル(33-voice)」というサービス名で提供を始めたものです。

キキミミパネルの「聞き耳」層の購入比率が高いブランドは成長が期待でき、「そら耳」層の購入比率の高いブランドはシェアが減少して、市場から撤退してしまう可能性の大きいことが懸念されます。

例えば、2010年6月の自主調査で、聞き耳の「金麦」の飲用が(他の層と比較して)多く、評価も高い傾向が見られましたが、「金麦」はその後、確実に伸長しています。また、同じ調査で聞き耳層で「芦田愛菜ちゃん」の好感度が高い傾向が顕著でしたが、その後の人気上昇はご存知の通りです。

これまでに、食品、菓子、飲料、住宅、健康サービス等の商品やサービスで調査を行い、非常に面白い分析傾向が出るとクライアント様からも高いご評価を頂いています。

商品ブランドの将来を、購買の実態や生活者のブランド意識ではなく、どんな人が購入している商品なのかで仕分けをして判断できるというのが、この分析の独自性であり面白いところです。

清水先生も学会での発表や書籍の執筆を通じて、この研究成果をこれから積極的に発信していかれると思いますので、皆さんも「聞き耳・死神研究」や「キキミミ分析」という言葉を聞かれるかもしれません。

面白い調査分析の手法ですので、興味があれば下記サイトをご覧下さい。

〇ブランド将来診断「キキミミ調査(33-Voice)」の詳細
http://www.myvoice.co.jp/menu/33-voice.html

〇「キキミミ調査(33-Voice)」のニュースリリース

http://www.myvoice.co.jp/news/pdf/release100601.pdf

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2011年12月28日 (水)

消費意識調査2011

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最近の調査結果から「消費意識に関するアンケート調査」
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2011年9月に「消費意識」の自主調査を行いました。同じテーマの調査は2年前にも実施していますので、その比較の中で特徴的なことを紹介します。

1年前と比べた収入は、減少が35%で増加の15%を大きく上回っています。
また、1年前と比べた購買意欲も減少が34%、増加15%で、収入減→購買意欲の低下、という悪循環が続いている結果でした。
しかし、2年前の調査結果と比べると、消費意欲の低下は45%→34%(11%減)で、支出額の減少も38%→25%(13%減)と改善しています。

まだ不況が続いて収入の減少が続き、震災や原発問題の影響で社会不安も続いているため、消費マインドは冷えた状態ですが、この調査結果を見る限り消費マインドの冷え込みは昨年度で底を打ったのかもしれません。

1年前と比べてお金をかけていることは、1)食品・飲料、2)旅行・レジャー、3)外食・グルメで、お金をかけるのを我慢しているのは、1)旅行・レジャー、2)衣料品・アクセサリー、3)外食・グルメとなっています。

不況と収入減少の中で「節約しつつ、ちょっと贅沢を楽しむ(38%)」という消費行動スタイルの生活者が増えているようです。

調査結果は下記で公開しています。また、詳細なレポートも作っていますので、ご興味がありましたらご覧下さい。

○消費意識に関するアンケート調査(第2回)2011.9
http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=15817

○消費意識に関するアンケート調査(第1回)2009.9
http://myel.myvoice.jp/products/detail.php?product_id=13411

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

本日で2011年の業務は終了しました。

来年もよろしくお願いいたします。

 

2011年12月23日 (金)

スミスさんのリサーチ撤退

NTTデータスミス(元スミス社)がマーケティングリサーチ事業から撤退されました。

具体的にはリサーチ部門をドイツ系のリサーチ会社のGFK社に売却して、今後は情報システム事業に特化して行くということだそうです。

スミス社はもともと西友系のリサーチ会社で、リサーチ事業の歴史も長く、優秀なリサーチャーの多い会社という印象があります。それがNTTデータのグループ会社になって、今回は外資系企業にリサーチ業務が引き継がれたことになります。

先日のJMRAのカンファレンスで、ジーエフケー・カスタムリサーチ・ジャパンのリサーチャーが研究報告をされていました。とてもユニークな研究発表でしたので、どんな会社なのかと思っていましたが、元スミスのリサーチャーだったと後から分かりました。

スミスさんもネットリサーチに取組まれていたので、私も何度か情報交換をしたこともありました。伝統と技術力のあるリサーチ会社がなくなるのは寂しい気がします。

ネットリサーチ業界だけでなく、リサーチ業界全体も変化していることを実感させられる出来事でした。

 

(NTT データスミス社のニュースリリースの抜粋)

株式会社NTT データスミス(以下、スミス)はマーケティングリサーチ(以下、MR)事業を、2011年10 月1 日より、ジーエフケー・カスタムリサーチ・ジャパン株式会社(以下、GfK-CRJ)へ事業譲渡することになりましたので下記の通りお知らせします。
なお、スミスはMR事業を除く、情報システム事業など現行のすべての事業については従来通り継続いたします。

当該会社の概要

【株式会社NTTデータスミス】(2011年4月1日現在)
代表者 代表取締役社長 本間 洋
所在地 東京都豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60-51F
設立年月日 1969 年9 月
主な事業の内容 マーケティングリサーチ事業/システム開発事業
資本金 94 百万円
従業員数 100 名

【ジーエフケー・カスタムリサーチ・ジャパン株式会社】
代表者 代表取締役社長 平野 享一
所在地 東京都新宿区西新宿6-22-1 新宿スクエアタワー29 階
設立年月日 2009 年9 月
主な事業の内容 カスタムリサーチ事業
資本金 80 百万円
従業員数 23 名(2011 年7 月末現在)

2011年12月 3日 (土)

リサーチ会社のインプット

良いリサーチサービスを提供するには、社員が主体的に学習して、新しい情報を収集し、付加価値を付けることがとても大事だと思います。

私はもう自分では案件を担当しなくなりましたが、こちらでもご紹介したIBM(SPSS)の「Business Analytics Forum Japan 」や、JMRAの「アニュアルカンファレンス」、それに、消費者行動研究学会のカンファレンス、日本マーケティング協会(JMA)のセミナー、JMRX勉強会等にできるだけ参加するようにしています。

そして、当社の社員にもこれらのイベントやセミナーには、できるだけ参加するように勧めています。それでも案件が忙しいため、大きなイベントでも10人位が参加するのがやっとという状態です。

しかし、それぞれのイベントやセミナーに行って感じるのは、ネットリサーチ会社の社員が非常に少ないことです。

アドホック調査の4割もネットリサーチが占める様になり、その役割が大きくなっているのに、勉強会や研究発表のイベントでは、従来型のリサーチ会社さんからの出席者の方が圧倒的に目立つのはどうしてなのでしょう?

1つには、ネットリサーチ会社には、リサーチビジネスというより、リサーチインフラを提供する「インターネットビジネス型」の会社が多いこともあると思います。

調査の設計や分析、レポーティング、提案は、従来型のリサーチ会社さんや、広告代理店さん、シンクタンクさんが行って、そこのデータ回収やパネルサプライをネットリサーチ会社が担当するという構造です。

そして、もう1つはネットリサーチ会社がスピード対応の中で、今日の明日のという短い納期に追われているため、なかなか半日、1日のインプットの時間が確保できないのが影響しているようにも思います。

学習して新しい技術や情報インプットしなければお客様に喜ばれる良いサービスは提供できないのに、学習する時間が確保できない、インプットしてもそれが活かせる業務でない、というあたりがネットリサーチ業界の矛盾なのかもしれません。

あるネットリサーチ会社では、今でも100時間近い残業をしているという話を聞いています。これでは忙しすぎて勉強しようと思ってもできないでしょう。

当社の残業時間はこの3年間で10時間ほど減少して平均35時間になりました。そして、リサーチのノウハウを提供する「リサーチビジネス」で生きて行きたいので、できるだけ社員に勉強する機会を設けて、技術対応で評価頂ける会社にしたいと考えています。

なかなか思うようには行きませんが、「勉強会やイベントには、参加しろ、参加しろ・・・」と言い続けるつもりです。

〇日本消費者行動研究学会 コンファレンス

http://www.jacs.gr.jp/conference/index.htm

〇JMRX勉強会

http://kokucheese.com/main/host/JMRX%E5%8B%89%E5%BC%B7%E4%BC%9A

2011年11月26日 (土)

JMRA アニュアルカンファレンス


111122_1230~001111122_1230~002日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)のアニュアルカンファレンスが11/22(火)に開催されました。

毎年1度のマーケティングリサーチ関係者が集まる大規模なイベントで、最新のリサーチ動向を反映した研究発表や、なかなかお会いできない関係者にお会いできる機会として、私も毎年楽しみにしているイベントです。

今年のテーマは「Renovation ~次世代リサーチの創造~」というものでした。

震災を乗り越えて新たに生まれ変わる復興を目指そう!ということと、新たなリサーチ手法を創り出そうというメッセージの込められたテーマで、例年とはちょっと違った雰囲気も感じられました。

日本コカ・コーラの魚谷会長の「マーケティングは経営そのもの」という基調講演はとても参考になりましたし、その後の5社の研究発表も、パネルディスカッションも大変刺激的でした。

今年の研究発表のキーワードは、①ソーシャルメディアの活用、②スマートフォンの活用、③リサーチのPDCAへの組込みのように感じました。それぞれ新しいリサーチスキームを作るために必要な要素であるのは間違いありません。

各社ともまだ実験的な試みをしている感じでしたが、この1年でも環境が大きく変化していることを実感することができました。そして、当社も「ソーシャルメディア」と「スマホ環境への対応」は研究していますが、スピード感を持って進めないといけないと思いました。

ところで、このイベントでちょっと嬉しく思えることがありましたのでご紹介します。

今回は5社が研究発表を行いましたが、この中で1番参加者からの評価が高く、懇親会で田下会長から表彰を受けたのが、サーベイリサーチセンターさんの『傾聴から見えてきたこと 「東日本大震災アンケート」』という発表でした。

「傾聴」=「リスニング」で、「ソーシャルメディアリサーチ」の研究発表だとばかり思っていましたが、こちらで取り上げた「傾聴」は訪問面接で「しっかり聴くこと」でした。

同社は災害の1ヶ月後に被災地に入り、避難所におられる被災者から451人に訪問面接で調査をしたのだそうです。ここでの調査の経験から、しっかり時間をかけて聴くことの大切さを訴えた研究発表でした。

他の発表は、スマホや、twitter等の新しい仕組みを使った調査の報告でしたが、リサーチ関係者の心を1番掴んだのが「訪問面接でしっかり聴くことの大切さ」というのが、とても心地よい結果で、リサーチ業界もまだまだ捨てたものではないと感じました。

こちらのカンファレンスはリサーチの時流を掴むのに不可欠のイベントです。今年の内容はFaceBookでも紹介されていますので興味のある方はご覧下さい。

〇JMRAアニュアルカンファレンス(2011.11.22)

http://www.facebook.com/jmra.conference

2011年11月14日 (月)

IBM Business Analytics Forum

111110_1749~001IBM(SPSS)さんの「Business Analytics Forum Japan 2011」が、11月9日と10日の2日間で開催されました。

これまでは「SPSS Directions」という名前でしたが、2009年にSPSS社がIBMに買収されたため、昨年度から今の名称に変わって開催されています。

こちらのイベントは、大学のマーケティングや消費者行動の先生方や、色々な企業のマーケティングの専門家が、様々な分析の事例を紹介していただけるので、とても勉強になります。

そして、以前は5千円位の参加費がありましたが、IBMになってからそれも無料になりました。

当社も集計ツールにはSPSSを使っているので、今年も10人以上のリサーチャーが出席しましたが、これだけの発表をただでお聞かせいただけるのはありがたいことです。

マーケティングデータを扱う人にとっては、参加必須のイベントだと思います。

今年は慶應義塾大学の清水聡教授が、「IT進歩が支える新しい産学協同の取組み ~きき耳パネルはこうして作られた~ 」というテーマで発表されて、当社と読売広告社が研究開発をサポートしてきた事例も紹介していただけました。

こういうイベントを毎年開いていただけるのは、本当にありがたいことですね。

〇IBM Business Analytics Forum Japan 2011

http://www-06.ibm.com/software/jp/analytics/events/baforum2011/index.html

2011年11月13日 (日)

インターネット調査会社の起業目的

私は15年ほどシンクタンクで従来型のリサーチに係わってきて、新しいリサーチサービスを作りたいという思いでマイボイスコムを設立しました。

しかし、同じネットリサーチ会社の創業者でも、色々な目的や思いで起業される方がいるのだなあ強く感じることがありました。

もう5年も前になりますが、あるネットリサーチ会社の社長と飲みに行く機会がありました。彼と飲みに行くのは初めてで、先方から情報交換をしようというお誘いを受けて伺ったものです。

その時にお互いの会社の状況や、ネットリサーチ業界や市場の動向などについて、をざっくばらんに意見交換をしましたが、何となく話のベクトルが違うのを感じました。

私はネットリサーチをどうすればもっと良いサービスにできるのか、どうやればスタッフの技術力が向上し、どうやればモニターの裾野が広がり回収率が高められるのか等に興味があり、その様な意見交換を求めていました。

しかし、彼から「私はリサーチをやったことにありませんし、リサーチそのものには興味がありません。私の興味はどうやって事業を大きくし、会社を大きくするかです。その目的でネットリサーチの分野を選んだのであって、ラーメンチェーンの方が事業の可能性が大きければ、ラーメンチェーンでも良いんです。」と聞いて大変驚いたのを覚えています。

そして、その会社は彼の狙い通り大きく成長して行きました。

起業の動機や目的は人それぞれです。そして、その考え方によってそれぞれの会社が何を大切にして、どの様なサービス提供や会社運営をするのかが決るのでしょう。

従来型のリサーチ会社であれば、そこの社長や経営者はリサーチの経験者であり、リサーチの職人的なところを持っていたと思います。

でも、現在のネットリサーチ会社にはその様な共通の経験値はありません。色々な価値観や基準で運営されている世界であることは間違いないと思います。

 

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2011年11月12日 (土)

インターネット調査会社の収益

ネットリサーチには、「インターネットビジネス」と「リサーチビジネス」の2つの顔があると申し上げましたが、収益を出すには「インターネットビジネス型」が圧倒的に有利です。

リサーチの経費は固定費である人件費の割合が大きく、リサーチ会社は人手間をかければかけるほど収益が下がる収益構造となっています。

ネットリサーチによって実査の効率は大幅に向上しましたが、調査設計や調査票作成、分析や考察、提案は「人」にしかできません。それも色々と経験を積んだ専門性のあるスタッフでないと、お客様に喜んでいただくことはできません。

この専門性の高いスタッフを育成することと、お客様にご満足頂くリサーチをするために十分な作業時間をかけることがコストを引き上げてしまいます。そして、現在のネットリサーチの市場価格では、なかなか十分な作業時間がかけられないのが頭の痛いところです。

ネットリサーチによって、マーケティングリサーチの価格は大幅に低減しました。しかし、それによって、今までの様な作業時間がかけられないところに、お客様のリサーチ会社に対する満足度低下の原因があるようにも感じています。

ネットリサーチ会社で高い利益を確保するには、専門スタッフに頼らない、パネルサプライや、データ回収と自動集計ツールの提供といったビジネスモデルにするべきなのでしょう。

でも、ネットリサーチは色々なお客様が必要としています。すべてのお客様がご自身で調査設計ができ、正しい調査票が作れて、集計や分析やレポート作成に対応することはできないと思います。

リサーチの経験もなく作業を行う時間もないので、専門の会社に任せたいというお客様の課題解決に向けて、頭からお尻まで、専門性と責任感を持って、親切丁寧に対応できるネットリサーチ会社も必要ではないでしょうか。

当社はそんな「リサーチビジネス型のネットリサーチ会社」になりたいと考えています。

 

2011年11月 5日 (土)

インターネット調査会社の機能

ネットリサーチが出てくる前までは、リサーチ市場は各社が得意な専門領域(業界や調査手法)を持って棲み分けをしている、どちらかというと競争の少ない市場でした。

また、それぞれの得意領域で人的な専門サービスを提供する業態であるため、比較的小さな専門会社が多い業界でもありました。

日本マーケティング・リサーチ協会の「第36回経営業務実態調査」を見ると、現時点でも会員であるリサーチ会社の平均従業員数は49人で、調査業務従事者は37人となっています。

特定の分野や手法に絞ると、この位の業務量しか確保できなかったこともあるでしょうが、これ以上の規模になると、人的サービスの「質」が保ち難かったこともあったのだと思います。

しかし、2010年のマクロミルさんのヤフーバリューインサイト社の吸収によって、従業員が500人を超える巨大なネットリサーチ会社が出来ました。

また、この合併でマクロミルさんの筆頭株主がヤフーさんになったので、システムやパネルのリサーチインフラを提供する「インターネットビジネス」の性格が強くなるのではないでしょうか。

ネットリサーチは「インターネットビジネス」と「リサーチビジネス」の両方の機能を持ったサービスです。このどちらも求められているのがネットリサーチ業界であり、各社がどちらに軸足を置いてサービスを展開するかで会社の特色は大きく異なります。

当社は設立当初から「専門性の高いサービス」と、「クオリティの高いデータ」でお役に立つリサーチ会社を目指して来ましたので、これからもその方向で頑張って行くつもりです。

また、お客様の中には「インターネットビジネス」のリサーチインフラではなく、「リサーチビジネス」の専門サービスを求めている方が意外に沢山おられるようにも感じています。

 

〇マイボイスコムの経営理念

「生活者と企業のコミュニケーションメディア」として、クオリティの高い生活者情報と、 専門性の高いサービスで、企業のマーケティングを支援し、豊かな消費生活に貢献する。

http://www.myvoice.co.jp/profile/philosophy.html

〇第36回経営業務実態調査(2011.6)」

http://www.jmra-net.or.jp/trend/investigation/pdf/realities_36/gyoumujitai2011.pdf

2011年10月29日 (土)

インターネット調査業界再編の主役

ネットリサーチは1998年頃から始まった新しいサービスです。それから暫くは小さな市場でしたからネットリサーチ会社の多くはベンチャー企業でした。

2005年に当社がベンチャーキャピタルから投資を受けた時には、インフォプラント、マクロミル、インタースコープの3社と比較した資料を作って欲しいと言われました。確かこの時点で1番売上が大きかったのはインフォプラントさんだったと思います。

しかし、その時に比較したインフォプラントさんとインタースコープさんは、昨年度からすべてマクロミルさんに吸収される形になりました。

インフォプラントさんがヤフーさんの子会社になったのは2005年10月で、インタースコープさんは2007年2月に買収され、その年の7月に2社が合併して「ヤフーバリューインサイト社」が出来ました。

そして、このヤフバリューインサイト社のリサーチ事業が、2010年8月にマクロミルさんに吸収されて、マクロミルさんの筆頭株主がヤフーさんになったというのが業界再編の流れです。

ヤフーさんは2002年10月にインテージさんと「インテージインタラクティブ社」という合弁会社を作って、ネットリサーチに取組んでいましたが、こちらの合弁は最近解消されました。

これだけ大きな業界再編が2005~2010年の5年間で進んだ訳ですが、改めてこれまでの流れを見ると、ネットリサーチ業界再編の主役はネットビジネスの雄であるヤフーさんだったことが分ります。

ネットリサーチは「インターネットビジネス」と「リサーチビジネス」の2つの顔を持っていますが、「インターネットビジネス」主導の色合いが強い業界再編だと言えるのではないでしょうか。

2011年10月15日 (土)

インターネット調査黎明期の品質基準

私は最近のネットリサーチ会社のリサーチ対する取り組み方や、品質基準に問題があるのではないかと感じることがよくあります。

どうすれば良いデータを集められるか、どんな調査設計で、どんな謝礼で、どの位の回収時間で、どの位の回答頻度までは問題ないか、データークリーニングは最低どこまでやるべきか、そんな品質基準やそれを守るためのガイドラインが必要なのだと思います。

でも実際はその様な基準やガイドラインが曖昧なままに、早さや、安さ、システムの利便性やモニター数と、営業力の激しい競争の世界に移ってしまいました。

その結果が、以前紹介した「経営判断の寄与度の大幅な低下トップボックスが19%9%)」や、「定量調査の低い満足度満足度49%)」の調査結果に現れているのでしょう。

ネットリサーチの黎明期に、従来型調査会社とネットリサーチ会社がしっかり議論を行い、品質基準とガイドラインを作り、それを守ることがリサーチ業界の常識になっていたら、もっとクライアント様にご満足いただけるサービスに育つことができたのではないかと思います。

少なくとも平石さん(旧インタースコープ)や、大谷さん(旧インフォプラント)、そして私も含めて当時のネットリサーチ会社のベンチャー社長は、その必要性を強く感じていて、何とかしようと前向きにもがいていたことは事実でした。

しかし、そのもがきが実る前に、インフォプラントさんと、インタースコープさんはヤフーさんに買収されてなくなりました。

そして、それを契機にベンチャー会社同士が競い合い、ある面では仲間意識を持って、ネットリサーチ業界を良くして行こうという機運も消滅してしまった感があります。

「リサーチサービス」は無形で見えないものです。それだけに品質を担保するための基準やガイドライン、そして認証制度等があるべきだと思いますが、現時点でそんな動きは聞こえてきません。

最近の市場動向やユーザー調査の結果を見ると、平石さんや大谷さんがまだ業界にいて「インターネットリサーチ研究会」があのまま続いていたらなあ、なんて思ったりしています。

2011年10月 8日 (土)

如何わしい調査手法?

1998~2003年の黎明期は、リサーチ業界の中では「ネットリサーチは問題の多い調査手法」で、ネットリサーチ会社は「如何わしい会社」と見られていました。

そして、ネットリサーチ会社は新興のベンチャー会社ばかりでした。

当社は1998年の創業ですが、その頃にインフォプラントさんや、インタースコープさんもスタートしていました。現在大きくなっているマクロミルさんや楽天リサーチさんは2000年の設立で、クロス・マーケティングさんは2003年の設立です。

そして、その頃に旧インタースコープの平石社長や、旧インフォプラントの大谷社長が中心になって「インターネットリサーチ研究会」という集まりを作り、今後のネットリサーチの発展のために研究したり、品質のガイドラインを作ったり、啓蒙活動をやろうと動き出しました。

これも従来型調査会社の集まりである日本マーケティングリサーチ協会では相手にしてもらえないからでした。それなら、自分達でネットリサーチの研究を行い、社会に役立つ産業にしていこうというのが新興ベンチャー会社の意気込みでした。

ある時に、従来型リサーチの世界とネットリサーチの世界の軋轢をすごく感じる出来事がありました。

2003年か2004年だったと思いますが、「インターネットリサーチ研究会」のフォーラムが中野で開かれました。この頃にはネットリサーチへの関心も高くて、会場には300人位が集まっていました。

この会場で、統計数理研究所のある先生が、会長であった平石さんに向かって「ネットリサーチは全く意味のないものである。ネットリサーチの統計的な根拠をちゃんと説明しろ。君達にはそれを説明する義務がある。それもなければこんな研究会はナンセンスだ!」と厳しく叱責されました。

その先生は長年リサーチの学術的な研究を行い、正しい調査のあり方を追求してきた方だけに、ネットリサーチが理論的な検証なしに拡大するのが我慢ならなかったのに違いありません。

平石さんが冷静に堂々と対応してくれたため、研究フォーラムは無事に終わりました。

でも自分達は1つの調査手法として社会に役に立つと思って、色々と検証しながら、良いサービスにするためにみんな頑張っているところなのに、そんな全否定の言い方はないよなあ。と思いました。

フォーラムが終わった後で、平石さん、大谷さん、と私の3人のベンチャー社長で飲みに行きました。

「俺達だって頑張っているのに、あんな言い方をしなくてもいいじゃないか。」と悔しい思いを共有しながら、3人で赤ワインを2本ほど空けたのでした。

2003~2004年頃は、まだネットリサーチはこんな風に見られていましたし、ネットリサーチ会社と従来型リサーチ会社の認識の溝も大きかったように思います。

〇インターネットリサーチ研究会http://internet.watch.impress.co.jp/www/article/2002/0213/ires.htm

2011年10月 1日 (土)

インターネット調査の営業

当社がインターネット調査を始めた1998年から5年間位は、お客様から「インターネット調査って何?」、「インターネットでリサーチなんかやって大丈夫なの?」、「代表性に問題はないの?」と必ず聞かれました。

でもそれに対して「インターネットでリサーチをしても大丈夫なんです。」とは言い切れません。

ただ、自主調査で色々とデータを取って分析してもちゃんとした傾向値は出ますし、ローデータの整合性や、FAに書かれたコメントを読むとしっかりしたものが多いので、役立つ情報だという確信はありました。

それでも、ネットユーザーに限定しているパネル自体がどの程度、リサーチの結果に影響しているかは分かりませんので、自主調査レポートなどをお示ししながら、「お役に立つデータが取れると思うのですが、お客様の調査テーマに合うかどうかはやってみないと分かりません。」と言うしかありませんでした。

多くのお客様はトライヤルで小さな調査を試しに実施したり、郵送調査と並行してインターネット調査をやって、その2つのデータを比較検証したりしていました。

そして、多くのお客様からは、意外にしっかりした分析ができる、郵送調査ともあまり変わらない、というご評価をいただけましたし、それでこの金額と時間であればいいね、というご意見もいただけました。

もちろんインターネット調査で良いテーマと、インターネット調査ではやらない方が良いテーマもありますが、インターネット調査で役立つ分野があるということは確かだと、色々な調査のお手伝いをして感じることは出来ました。

インターネット調査の黎明期とはこんな感じでした。

そんな「本当に大丈夫なの?」というお客様の懸念を、ベンチャー企業のネットリサーチ各社が、それぞれの営業の場面で試行錯誤しながら払拭していたのが1998~2003年の状況でした。

ちなみに当社もスタートして3年くらいの回収率は70%もありました。謝礼も今より5倍くらいは出していましたし、回収時間も4、5日は取っていました。

そいう面では質的な市場環境に関しては、今より恵まれていたのかもしれません。

2011年9月24日 (土)

初期のインターネット調査営業

小さな会社のスタートアップで1番大切なことは何だと思いますか。それは間違いなく販売力があるかどうかだと思います。

マイボイスコムは資本金3千万円でスタートしましたが、会社設立にかかるもろもろの費用やシステム投資で700万円位は直ぐになくなりました。人件費やオフィス代などの固定費を考えると半年ちょっとで残りの資本金はなくなります。

その間で仕事を取って納品し、売上を立てて、入金しないと半年後には確実にキャッシュがなくなります。会社のスタートアップって大体こんな感じで、いきなり追い込まれた状態で始まるものなのでしょう。

私が営業で懸念したのは、「マイボイスコム」という誰も知らない会社で、「インターネット調査」という訳の分からない商品で果たしてアポが取れるのか、果たして真面目に話を聞いてくれるのかということでした。

これまで働いていたCRC総合研究所は社歴が40年以上もあって、社員が千人もいる会社でしたが、知名度が低くてなかなか新しいお客様のアポが取れませんでした。そのためいつも「伊藤忠商事や第一勧業銀行系列のシンクタンクです。」と親会社の信用で営業をせざるを得ませんでした。

それが先ほど出来たばかりの会社です。社員は3人です。まだ実績はありませんが、インターネットでマーケティングリサーチができる様になりました。貴社のマーケティングのお役に立つと思うのでお時間を下さい。と言ってもアポなんて取れないだとうな、と考えていました。

でも色々なつてで紹介をもらったり、電話での新規開拓もやってみたら、意外に皆さん会ってくれるし、ちゃんと話も聞いてくれました。日本社会はビジネスに関してはそんなに閉鎖的ではなく、新しい価値を作って、熱意を持ってお願いすれば、意外に皆さん真面目に聞いてくれるようです。

「伊藤忠商事や第一勧業銀行系列のシンクタンクです。」と言っていた時よりも、「インターネットでリサーチをする会社のマイボイスコムと申します。」という方がアポはずっとスムーズで、新しいお客様も開拓できました。

1999年というとインターネット人口は1千万人ほどで、まだ「ネットリサーチ」という言葉もありませんでした。でもインターネットで生活者の声が集められる、迅速に市場分析ができることに対する興味、関心は高かったのかもしれません。

2011年9月17日 (土)

PCシステムダウン

チープでもシステムができて大変に便利になったのですが、ある時に大変なことが起きてしまいました。

まだパネルが数千人しかいなかった時です。その頃としては大規模な3千人ほどにお願いをする案件でした。いつもの様に夕刻から実査の準備をして、10時過ぎに依頼メールを送信して帰宅をしました。

翌日会社に行くとシステムがダウンしていました。その頃は夜中の11時過ぎがインターネット利用のピークで、10時過ぎに送ったメールでかなりの人が回答に来てくれたため、PC1台のシステムが音を上げてしまったようです。

恐る恐るメールを開きました。約600人からメールが入っていました。

「システムが繋がらなくて答えられません。」というものが大多数でしたが、「どうなっているんだ。」、「折角来てやったのにふざけるな。」と怒っておられる方も沢山いました。

一緒にやっていたO君が「やばいね。この事業もここまでかもしれないね。」とぼそっと言いました。

メールの文面は1人1人違います。心配してくれている人もいれば、戸惑っている人もいます。そして、本当に怒っている人もいます。これは一斉メールで済むことではないと思いました。それで、1人、1人の文面を読んで、自分なりにお詫びのメールを送ることにしました。

昼間から夜中までかけて約600人にメールを送りました。「マイボイスコムの高井です。この度はご迷惑をおかけしてしまって大変申し訳ありません・・・・・。」、1人1人のメールを読んで、感じたことをお伝えしながらお詫びをしました。

「確かにこれで終わってしまったかもしれないな。」そんな失望の中でこの日は帰宅をしました。

でも次の日にメールを開いて驚きました。送ったメールの半数以上の400人位から返事が来ていたのです。

「そんな事情ならしかなたいですね。」、「ちゃんと返事をもらえるとは思っていませんでした。」、「そんなに怒ってはいませんから大丈夫ですよ。」、「1人で頑張っているんですね。これからも応援します。」そんな凄く温かいメッセージに驚くとともに、本当に嬉しくてまたウルウルしてしまいました。

インターネットって無味乾燥な世界ではない。ちゃんと気持ちや誠実さが伝わるコミュニティなんだ。そんなことを実感することができました。

そして、私がやろうとしているネットリサーチ事業は、こんな善意のモニターによって支えられているのであって、そのことを大切にすることが重要なんだと確信しました。

そのため、当社の行動指標に「モニターと顧客に誠実に対応して、信頼される会社を目指す。」という項目を入れて、社内では常に「モニターを大切に!」と話すようにしています。

モニターとの信頼関係こそが、良いネットリサーチを提供するための根っこだと私は思っています。

2011年9月11日 (日)

メルアドチェック

データベースのシステムが出来る前は、テキストベースでモニター情報を管理していました。そのため、モニターへの調査依頼メールも、エクセルで属性別に何度もソートして、必要な人数を抽出して、それをメールのBCCに入れて一斉に送信していました。

この方法だとメルアドの形式チェックが出来ていないので、すべてモニターさんが打ち込んだ状態でメルアドが入っています。

そのためピリオッドがカンマやコロンになっているだけで、メール送信が途中で止まってしまいます。

最初は数百人に送る程度でしたので、目で見ても10分くらいで形式ミスのメルアドを見つけて直せましたが、これが数千人規模になると本当に大変でした。

数千件のメルアドを目で見て間違いを探す、昼間は営業で、夕方から調査票を準備していたので、メール送信のメルアドチェックをしていたのは、いつも夜中の10時、11時で、早く見つけないと終電に間に合わなくなるので焦っていました。

でも不思議なもので、たかがメール送信なのですが、BCCに入れた数千件のメルアドから1時間も2時間もかけてメルアドのミスを見つけて、終電前にメールが送り終わると、それだけですごい仕事をしたような充実感と達成感を持って帰宅することができました。

数千人のモニターさんに調査の依頼をすることができる。そして明日にはかなりの方が答えてくれる、それはこれまでの実査の環境と比較するととんでもなく凄く、ウキウキすることで、1時間や2時間のメルアドミスを見つけるくらい何でもないことだとでした。

1998年の準備期間はこんな状態でしたので、30万円のPCサーバーが入り、300万円でデータベースのシステムが完成すると、とても便利になり、もう目視でメルアドチェックをしなくて良いことがとても大きな前進に思えたのでした。

こういうところもスタートアップの面白いところです。

2011年9月10日 (土)

システム投資

社内ベンチャー制度で会社を作り、3千万円の資本金ができました。

3千万円というと個人では結構使いでのある金額に思えるかもしれません。良い車が買えるし、かなり旅行や豪華な食事をしてもだいぶ持つお金です。

でもビジネスの資金で、この中から設備投資や家賃、社員や自分の給与も賄うとなると、けっこうすぐになくなる金額です。そして、社内ベンチャー制度の規定には、この資本金がなくなったら会社は閉めるという条項もありました。

出向できてくれた岡島君が伊藤忠インターネットに出向していた経験から、「ちゃんとしたサーバーやデータベースを入れたらそれだけで資本金の半分はなくなるよ。できるだけ設備投資は抑えないといけないから。」ということで30万円のPC1台と、フリーウェアのデータベースでシステムを準備しました。

それでもCRCへの社内発注でシステム開発に3百万円かかりました。私はシステムのことは分かりませんので、あんなことやりたい、こんなことが必要とシステム担当者のF君に頼んだら、「何を作るのか全く分からん!」と言って机を叩いて怒ってしまいました。(そのF君は今も当社のシステム担当で頑張ってくれてます)

システムの開発費用がハードが30万円、システム開発費用が300万円、とミニマムでスタートしたことは、その後のキャッシュフローの面で助かりました。どんなビジネスでもスタートアップの設備投資は必要最低限のケチケチに徹するのが良いと思います。

安くてチープなシステムでしたが、これができて本当に助かりました。

2011年9月 3日 (土)

スタートアップ

会社のスタートアップや、社内ベンチャーのことってあまり経験している人が多くないと思いますので、いくつか紹介させて下さい。

当社がネットリサーチ事業を創業したのは1998年の4月で、マイボイスコム(株)になったのが1999年7月です。

伊藤忠インターネットという会社に出向していた岡島くん(現在の取締役)に出向で来てもらい、Iさんという20代の女性を契約社員として採用して3人の船出でした。

1999年6月までは1,000人を超える大会社だったのが、7月からは従業員3人の会社になりました。

やっていることは変わらず、サイトを構築してモニターを集め、ネットリサーチの説明をしてお客様を探し、リサーチ案件を受注して、調査設計を行って、実査、集計、分析、レポーティング、報告を行うことです。

でも1つの会社になると、色々な規定を作り、毎月の決算書を作り、毎月、経営会議や取締役会を開催して議事録も作り、税務申告もしなくてはいけません。また、会社の請求や支払いも自分達でやる必要があります。

初めての案件が終わった時に「請求書ってどうやって作るのだろう?」と思いました。これまでは会社の経理が立派な請求書を作ってくれていましたがもう誰もやってくれません。ワープロで見よう見まねの請求書を作り、新しく作った社印を押して送りました。

そして、次の月に会社の口座に、そのお取引先から請求どおりの金額が入金されているのを見て、「あんなワープロの請求書でもちゃんと振り込んでくれるんだ。」と不思議な感じがしました。

また、支払いは会社の1階にあったATMから自分で振り込んでいました。これは5年間ほど続けていたのですが、25日の給与日には絶対に入金を忘れてはいけないと緊張しました。

会社の1階に2台の専用ATMがありました。本社にいた約6百人が給与を下ろしたりするために設置されていたものです。そこで毎月月末になると40枚、50枚の請求書を手作業で振込みをしているのですから迷惑な話です。後ろに5人くらい並ぶと「すみません。」と言って最後尾に並んで入金しました。

しかし、25日に社員全員の給与を振り込んで、月末にすべての請求書の振込みを終わると、ああ今月もちゃんと約束どおりに支払いができたんだ、と妙な充実感を覚えました。

1つの会社になると雑用が山ほど出てきます。

でも、本当にあの請求書で入金してくれたんだ、今月もちゃんと全ての支払いが約束どおりにできた、今月は小さいけど黒字になったなど、社員だった時には分からなかった色々な喜びもあるのがスタートアップなのだと思います。

2011年8月23日 (火)

会社設立

9ヶ月の準備期間を経て、K副社長が言っていたネガティブな要因を潰して行きました。

1)インターネット上に人は個人情報など登録しない。→ 色々と工夫をして1万人近く集まりました。

2)登録してもいい加減な人がいい加減な答えしか書かない。→ 色々と検証しましたがちゃんとした分析傾向が出ました。

3)いい加減な答えを分析しても何も役に立つ情報にならない。→ 沢山のお客様に調査結果を見てもらいましたが、面白い結果だとご評価いただけました。

4)役に立たない情報に企業はお金を払わない。→ 20社から小さなお取引をいただくことができました。

「K副社長、4つの課題とも何とかクリアできそうです。」そんな気持ちで事業計画を作り、社内ベンチャー制度で会社を作るかどうかの経営会議に臨みました。

その前に、I部長の後任のK経営企画部長との打ち合わせがありました。「経営会議の資料を用意した。君の計画通り資本金は3千万円で、CRCが7割、君が3割の出資で始める。

CRCがマジョリティだからCRCの名前の付いた社名で、社長はCRCの役員から出して、君は専務ということでいいよね?」、「やらせてくれるなら、何でもかまいません。」ということで原案も決まり、1999年2月の経営会議で20人ほどの役員の前で、事業計画を説明させていただきました。

この時までにはもう絶対にやりたい。ネットリサーチを事業にしてみたい、そして、良い会社を作りたいという思いが強くなっていました。流れによっては土下座をしてでも頼むつもりで経営会議に臨みました。

1人の常務が口火を切りました。以前の上司で、シンクタンク部門を所管していた常務です。「この事業は意義がある。社内活性化のためにも、是非、進めてもらいたい。」

別な常務も「私も賛成だ。インターネットへの取り組みは大切だ。是非、頑張ってほしい。」と言ってくれました。残りの2人の常務も賛成の意見を言ってくれました。

そして、あのカミソリと言われたK副社長も、賛成の意見を、論理的に述べて下さいました。

しかし最後に、A社長が「ちょっと待てよ。K部長、この計画はちょっとおかしいんとちゃうか?」と仰います。

「何故、この会社にCRCの名前を付けて、何故、高井君が社長をやらないんだ。この事業は誰が考えて、誰がここまでやってきたのや。社長は高井君がやり、社名も彼が考えて付けのが筋とはちゃうんかい。この点の修正をすれば自分も賛成です。高井君、しっかり頑張れよ。」そんなまとめでした。

A社長はしっかり約束を守ってくれました。K副社長もちゃんと認めてくれました。会議でA社長の話を聞いた時には、自分は胸が詰まり、涙を堪えるのがやっとでした。

そして、沢山の方々のご理解と応援のもとで、マイボイスコム(株)は1999年7月に設立しました。

どんな会社も設立までには色々な思いや、経緯、そして小さなドラマがあるのだと思います。

あれからもう13年が経ちました。

そして、会社は作るより続けることの方が何倍も大変なこと、会社経営はなかなか思う通りに行かないことを嫌というほど痛感している毎日です。

それでも多くの方々の理解とご支援があってでできた会社ですので、そのご恩に応えるためにも、しっかり頑張って、感謝の気持ちを持って、マイボイスコムを世の中に役立つ良い会社にしたいと思っています。

 

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

〇会社概要    http://www.myvoice.co.jp/profile/

 

 

2011年8月22日 (月)

ネットリサーチ会社の準備

A社長、K副社長との話し合いが終わり、4月からインターネット事業部に移り、机1つとPC1台と、300万円の予算を貰って、社内発注で簡単なシステムを作ってネットリサーチの準備を始めることになりました。

そして、しばらくしてA社長に呼ばれて1対1で話をさせていただく機会がありました。

A社長から「新しい部署はどうや、インターネット事業部長にはちゃんと説明してあるからしっかりやるように。」と仰って下さいました。

でも自分は焦っていました。ちゃんとインターネット調査のビジネスが立ち上げられるのか、ちゃんと社内ベンチャーとして認めてくれるのか、そして、本当に会社が作れるのか・・・

それで、私は「これから不休不眠で急いで準備を進めるので、3ヶ月で大丈夫です。7月には会社を作るかどうか審議をして下さい。」とお願いをしました。

でもA社長は「高井くんなあ。そんなに急ぐなよ、事業の準備には急いでも半年から1年はかかるものだ。その位は時間をかけてしっかり準備をしなさい。」と仰います。

でも、私は焦っていましたし、急げば3ヶ月でできると思い込んでいましたので、「いや、社長、寝ないで頑張りますので3ヶ月で線を引いて下さい。それまでには何とかやってみせますので。」と言うと、また「いやいや、半年から1年はしっかり準備をしなさい。」と言います。

「でも社長、私は・・・」と3度目に食い下がった時に、突然A社長が「お前なあ、商売をなめたらあかんでえ。自分は伊藤忠で長いこと繊維の商売をやり、何人も商売で失敗して夜逃げをしたり、家庭を崩壊させたり、自殺したりした人を見ているんだ!、君にそんなことをさせないために言っているのだから、黙って私の言うことを聞きなさい!!」と厳しく言われたのでした。

でもその時は全く納得できませんでした。本当にわからずやなオッサンだなあ。7月までにはしっかりしたF/Sをやってみせるから見ていろよ、という気持ちでした。

簡単なシステムを作ってもらって、モニター募集を開始したのが6月で、その翌月の1998年7月から、今も毎月実施している自主調査の「定期アンケート」を開始しました。

色々と工夫をすることで、モニターの登録者も徐々に増えてきました。そして、調査を依頼するとしっかりした回答が帰って来ました。回収したデータを大切に分析したらちゃんと傾向値も出てきます。コメントも8割以上ありリッチでしっかりした内容であることに驚きました。

そして、以前お取引していた企業の方々から、「高井さんが始めたのなら協力するよ」といってトライヤルの仕事も出してもらえました。

すごいなあ。モニターさんはちゃんと真面目に答えてくれるじゃないですか。そして、企業の皆さんも面白い、結構使えるかもと仰っていただけました。この頃は毎日が驚きと小さな感動の日々でした。

K副社長の仰る4つのできない理由が、1つ1つクリアできてきた思いで徐々に自信もできてきました。

でも、一通り準備が出来たのは1997年の12月でした。準備を初めて9ヶ月も経っていました。

A社長の言っていたことが正しかったこと、世の中には亀の甲より年の功ということがあることを知り、自分のいたならさを実感した9ヶ月でした。

2011年8月21日 (日)

事業化の準備

I部長が作ってくれた社内ベンチャー制度で、今で言う「インターネット調査事業」にチャレンジすることを決めました。

お誘いを受けていた金融系シンクタンクの経営企画部長に説明したら、「君は絶対に騙されているよ。会社はそんなに甘くはない。君1人のことで新しい制度を作ったり、新しい会社を作ったりすることはないよ。そんな危ない話に乗って、この話を断って本当に良いのですか??」と忠告されました。

でも、I部長は約束どおりに社内ベンチャー制度を作ってくれました。そして、その制度で会社を作るから、A社長と、K副社長に事業プランを直接説明するように言われました。

しかし、トップのお2人に事業プランを説明に行くと、思わぬ反応が寄せられました。

A社長は「高井君なあ、僕は真剣に君のプランを読んだけど、この事業プランが本当に商売になるのかどうか分からんかった。」と仰ります。

そして、K副社長は「高井君ねえ。この事業は絶対にうまく行かないよ。これは止めた方が良い。この事業がうまく行かない理由は4つある。」と言って、できない理由を論理的に説明してくれました。

1)インターネット上に人は個人情報など恐くて登録しない。

2)もし登録してもいい加減な人がいい加減な答えしか書かない。

3)いい加減な答えをいくら分析しても何も役に立つ情報にならない。

4)役に立たない情報に企業はお金を払わない。

だから商売にならない・・・というものでした。

K副社長は東大出で頭が良くカミソリと言われていて、IT業界にも精通した方でした。1997年のインターネット環境からするとこれが常識的な見方だったのだと思います。

社内ベンチャー制度はできたものの、それに私のプランを適応するのは時期尚早、1年間は準備をして、その結果を見てから判断するという流れになりました。

分が悪くなるのを見てI部長が援護射撃を打ってくれました。「社長、これからはインターネットの時代で、こういうビジネスは迅速に取組むことが必要なのだと思うのですか・・・」

「いや、I君、わしは彼のプランを真剣に何度も読んだが、本当に商売になるか分からんのだよ。この状況で進むのは危険なので、ちゃんとF/Sをやらせるべきなのとちゃうんか。」と A社長は引きません。

私は頭に血の上るのが分かりました。「これじゃ話が違うじゃないかあ!」と怒鳴ってしまいそうになりました。でもその時に、私の事業プランにA社長が沢山の赤線を引き、色々とコメントの書き込みまでしているのが見えました。

A社長はちゃんと自分のプランを読んでくれている。社長はちゃんと読んでくれているんだ・・・。そう何度も心の中で繰り返していううちに冷静になりました。

社長室を出るとI部長は私を会議室に招いて、「説得できなくてすまなかったな。でも2人とも悪い人ではない。お前のことを考えての判断なのだと思うよ。高井さんなあ、お前の力で爺さん達にちゃんとできることを見せてやれよ。」と仰りました。

A社長がちゃんとプランを読んでくれたという思いと、金融系シンクタンクの経営企画部長が言った「君は騙されているよ。」という言葉が頭の中で交錯していました。

2011年8月20日 (土)

社内ベンチャー制度って

「面白いプランじゃないか。応援するからCRCの新規事業でやってみろよ。」

「CRCのコストやスピード感覚では無理ですよ。」

「じゃ子会社を作ってやるのはどうだ。」

「もう親会社に振り回されるのは嫌なんですよ。」

「じゃ、会社でベンチャー制度を作ってやる。それで挑戦してみたらどうだ。」

「社内ベンチャー制度って何ですか??」

「丁度社内活性化のために必要だと思っていたんだ。俺がいい制度を作ってやるからやってみろよ!」

実際にはI部長と2人で4、5回やり取りをしたのですが、こんな話の流れで「社内ベンチャー制度」を作ってもらって、ネットリサーチ事業を始めることになりました。

ヘッドハンティング会社が意識的にリークしたのか、先方の総研が先走ったのかは分かりませんが、人生なんて本当に分からないものです。

どうやって会社を作ったら良いか分からない、会社を創る資金が十分にない、システムをどこに頼んだら良いか分からない、事務所も見つけなくてはいけない、そんな課題のほとんどが「社内ベンチャー制度」でやらせてもらうことで一気に対応方法が見えました。

I部長は、その後、伊藤忠商事の部長に戻って、ファミリーマートのUSA社長や常務をやって今年退任になりました。その後も懇意にさせていただいて、退任時にも会食をして、その時のお礼を申し上げることができました。

Iさんも私の人生の恩人です。普通は部門のリストラという事情はあっても、あんなに勝手なことを言う社員の話を粘り強く聞いてくれて、新しい制度まで作ってくれたことに心から感謝をしています。

こういうこともあるから、人生は面白いのだと思います。

2011年8月19日 (金)

呼び出し

ヘッドハント会社の情報管理はしっかりしていると思ったのですが、私の様に3ヶ月ものらりくらりを続けていると色々あるみたいです。

ある時、経営企画部長のIさんから急に呼び出しがありました。行ってみると「高井さん、何か会社に隠していることないかな?」と言います。「何のことでしょうか?」と聞くと、「XXX総研から君が欲しい、という申し入れが来て、A社長が引き止めるように言っている。」というのでした。

もちろん会社には内緒でプライベートな時間に動いていたのに、突然、自分の転職話が経営企画部長から出たら焦りますよね。「何でばれたの?、誰がばらしたの?」と頭の中は一瞬で真っ白になりました。

私の態度が煮え切らないので、先方のシンクタンクかヘッドハントの会社が情報を流してしまったのです。(ヘッドハントもこういうこともあるので注意した方が良いですよ)

でもばれたのならしかたないと、言いたいことを言わせてもらいました。

「会社の方針や方向性と合わないで。だいたいA社長は酷いです・・、私はリサーチャーをやるためにこの会社に入って頑張ってきたつもりです。やっと築いたお客様の信頼に対して不義理をしなくてはいけない気持ちが分かりますか?、私にはITコンサルなんてできませんし、やる気もありません・・」

「この会社でやれることないのか?、できるだけ希望に沿った異動を考えるけど。」

「こんな会社にやりたい仕事なんてありません。リサーチの世界で生きて行きたいので、申し訳ないですが辞めさせて下さい。」

「今から銀行が作ったシンクタンクに行っても面白くないんじゃないか。」

「でも今よりはずっといいと思います。」

「あまり君にとって良い選択じゃないな。他には本当に君のやりたいことはないのか?」

・・・・・・

「実はインターネットを活用した情報サービスの構想で優秀賞を頂きました。その事業をやりたいという思いはあるのですが・・」

「優秀賞を取るなんてすごいじゃないか。その事業プラン、俺にも見せてくれよ。何か力になれるかもしれないからさあ・・」

という流れから、I部長との話しが始まりました。

2011年8月17日 (水)

ヘッドハント

インターネットを使ったリサーチの事業をやってみたいなあ・・・

でも会社ってどうやって作るのだろう?

そもそも事業を始めるにはいくらお金が必要なのだろう?

急に会社を作ろうと思っても、普通は何をどうしたら良いか分からないですよね。こういうことは考えれば考えるほど不安になるもので、少し考え出しただけで直ぐに煮詰まりました。

そんな時に、会社に「実は私はXXXXというヘッドハント会社の者です。高井さんのキャリアを必要としている会社があります。是非、1度話を聞いてもらえませんか。」という電話がありました。

こういう電話って本当に突然会社にかかって来るんですね。どんな話か分かりませんでしたが、自分は仕事がなくなって中途半端な状況でしたので、「では、お話だけでも・・・」と小さな声で答えて指定の喫茶店に行きました。

そこには60歳過ぎの大柄で温和そうな紳士が待っていました。ある金融系シンクタンクのマネジャーのお話でした。なるほどそのポジションなら今までの経験も活かせそうです。「興味があるので具体的な話を聞かせて下さい。」と話を進めました。

先方の役員と3度ほど面談をして、是非来て欲しいということになりました。マーケティング分野を強化するために経験者のノウハウが必要で、私の経験はピッタリだと言って頂けました。そして、提示された条件も現職を上回るもので全然悪くありません。

この話に載れば自分が主体的に働けるリサーチの世界に戻れるんだなあ、とちょっと安心しました。

しかし、「インターネット上のフォーカスグループの構築による情報サービス事業」の構想と、少し前にお会いした起業家の皆さんの魅力的な表情や、藤田社長の「結局この道しかなかったなあ」という豪快な笑い声が頭から離れていませんでした。

生活者の声をインターネットで集めて、企業にお届けする。生活者と企業のインタラクティブな情報のやり取りの中で、情報共鳴型マーケティングのお手伝いする。そんなサービスを作ってみたいという気持ちだけが大きくなっていました。

それで、金融系シンクタンクの方には、「興味はあるのですが、しばらく考えさせて欲しい。」と最終返答を延ばしていました。

2011年8月15日 (月)

起業家の方々

「ビジネスプランコンテスト97」で有難かったのは、有楽町の東京国際フォーラムで受賞パーティまであり、色々なベンチャー起業家にお会いする機会があったことです。

こちらの受賞式はベンチャー企業を立ち上げてりっぱに経営している方の表彰がメインでしたが、そこには新聞や雑誌によく出てくる有名なベンチャー経営者の方々が目の前に沢山おられました。

日本マクドナルドの藤田社長、ユニチャームの高原社長、ドトールの鳥羽社長、CSKの大川社長など、いつも雑誌で拝見するきらびやかで有名な経営者が目の前におられます。

勇気を振り絞ってご挨拶に伺うと、皆さんとても明るく、エネルギッシュで、魅力的な方々ばかりでした。

藤田社長には学生部門で賞を取った慶應大の大学院生と2人でご挨拶に行きました。藤田社長が書かれていた「ユダヤの商法」等の本は何冊か読んでいたので、ドキドキしながら話を伺いに行きました。

すると藤田社長が彼女が慶應大の学生だと聞いた時に、「そうかあ君は慶應の学生かあ。私は東大法学部だったけど、回りは役所で働くことしか考えていない馬鹿な奴が多くてちっとも面白くなかった。自分も慶應の様な自由な学校に行っていれば、人生が変わっていたかもしれんな。」と仰いました。

それで私が「もし藤田社長が慶應に行っていたら、今頃は何をされていたと思いますか?」と質問をさせていただきました。

藤田社長はうーん、と5秒くらい考えてから、「結局は今と同じ商売をしていただろうな。この道しか考えられないなあ。君たちも商売の世界でしっかり頑張りたまえ。」と言って豪快に笑っておられたのを良く覚えています。

とても人間的に大きくて魅力的な方でした。話を伺ったのはおそらく5分ほどだったでしょうが、1時間くらい話をした様な興奮を覚えながら帰路に付きました。

藤田社長は2004年にお亡くなりになりましたが、今でもその時に頂いた名刺を大切にしています。

こんな素晴らしい出会いも「自分の好きな仕事を立ち上げてみたい・・・」という気持ちを強くしてくれました。

2011年8月14日 (日)

ビジネスプランコンテスト97

これまでの自分は色々なリサーチの課題に取組み、郵送調査、訪問調査、ヒアリング調査、グループインタビュー調査、観察調査、文献調査、統計分析調査など、色々な調査手法も経験していました。

実査をしっかりやることはリサーチの基本ですが、郵送でも訪問でも実査は大変な力仕事で、人の労力も時間も費用も沢山かかります。それがインターネットで効率的にできたら素晴らしいと感じました。

また、この頃に色々なお客様のマーケティングをお手伝いしていて、企業と生活者が双方向性のやり取りをしながら両者で考えて行く、「情報共鳴型マーケティング」を創って行くことが大切で、インターネットでその様な環境が作れたら面白いと思いました。

毎日夕方の5時には仕事が終わる恵まれた環境にいましたので、インターネットは何で、米国で動き出したインターネットマーケティングについて少し調べてみることにしました。

そんな時に日経新聞の小さな記事で、社団法人ニュービジネス協議会が「ビジネスプランコンテスト97」のビジネスプランを公募していることを知り、丁度良いので今考えていることをプランにまとめて、このプランコンテストに出してみることにしました。

「ネットフォーカスグループの組織化による情報サービス事業~生活者と組織のコワークを促進するネットワークの形成を目指して~」

これがその時に考えたプランのタイトルです。

考えたサービス内容は今のネットリサーチそのものですが、97年の当時はネットリサーチも、インターネット調査や、インターネットリサーチという言葉もなかったので、こんな長いタイトルになりました。

このビジネスプランが書類審査と、7人の審査員の前でのプレゼンを経て、「優秀賞」を頂くことができました。「あれ、これはビジネスになるのかもしれないな。」、「新しいリサーチの形になるのかもしれないな。」、そんなことを具体的に考える切っ掛けになりました。

そういう意味で、この様なベンチャーを支援のイベントって大切だと思います。このプランコンテストは、私の人生にとって大変ありがたい存在でした。

この時に頂いた小さなトロフィは今でも大切にしています。

でも、副賞でいただいた20万円は1ヶ月ほどでほとんど友人と飲んでしまいました。

2011年8月13日 (土)

インターネットで調査?

ITコンサルティング事業室は立上げたばかりで、社内の寄せ集め的な組織でしたので、あまり仕事もありません。上からは「ITを勉強しろ」と言われるけど、目の前に仕事がなければ勉強するのもなかなか難しいものです。

毎日、これで良いのだろうか?と思いつつ、良く分からない本を読んだり、あまり興味の湧かない受講料の高いセミナーに行く毎日でした。

これまではリサーチの仕事が忙しくて、10時、11時まで働いていたのが、夕方の5時にはちゃんと仕事が終わります。正確に言うと1日に4時間くらいは本を読んで、あとは社内をブラブラしていたので、ちゃんと働けば2時には仕事(勉強)が終わるような毎日でした。

こういう生活って一見楽そうですが、やっている本人は大変に苦しいものです。

本来はやれる仕事のフィールドがあり、そこではお客様の役に立ち必要とされていたのに、その仕事はやってはいけない。そして、目の前にある業務には興味も感じられない。

こういう環境だと人は自信がなくなり、気持ちに張りがなくなり、毎月のように風邪をひくようになります。人間の体は不思議なものです。10年分の風邪を半年でひいてしまいました。

そんなもどかしい生活でしたが、ある雑誌を眺めていたら「これからインターネットが今後普及してきて、マーケティングにも活かされるようになる。」ということを読みました。その中で、米国のVote Links というサイトで、世の中の話題や問題についてインターネットで世論調査の投票をして、結果を公開しているという記事が面白いと思いました。

インターネット上で一般の生活者の意見が取れるのかあ・・・

でも本当にまともに答えてくれるのだろうか?、回答者は何が目的で答えてくれるのだろうか?、母集団が明確でない代表性のない回答に意味があるのだろうか?

そんな疑問は感じましたが、「インターネット上で一般の人の意見が聞ける。回答してくれる。」ということがとても不思議で、新鮮な印象を覚えました。

2011年8月 7日 (日)

リサーチ部門のリストラ

会社のリストラでこれまで積上げて来た仕事がなくなる・・・。

そんなことは今の時代では当たり前のように起きていることなのでしょう。

自分も15年近く携わってきたリサーチの仕事がなくなり、IT特化という会社の方針で、新設されたITコンサルティング室の部長補佐になりました。でもITやシステムなんて全然分からないし、興味もないし、これでコンサルなんかやっても役には立たないだろうと実感しました。

やっぱり20代でどんな仕事に携わったかが重要です。20代で経験した地道な仕事が基礎になり、そこに30代、40代での色々な経験を積上げていくことで、仕事の実力が決るのだと思います。

また、リサーチ部門がリストラされて1番辛かったのは、自分なりに一生懸命に仕事をして、長い年月をかけて信頼をいただき、色々なご相談を頂けるようになったお客様に、「会社の方針でもうリサーチの仕事ができなくなりました。申し訳ありません。」と言わざるを得ないことでした。

私の上司の室長も50代で商社の鉄鋼部門から来た方で、自分よりもITの「あ」の字も、コンサルの「こ」の字も分からない人でした。その室長からとにかく何でも良いからITを勉強しろと言われて、本を読んだり、高いセミナーにも出ましたが、実務経験がないとやっぱり駄目でした。ちっとも頭に入らないし興味も沸きませんでした。

30代後半から、これまでの経験やネットワークが活かせない世界で生きて行くのは、なかなかしんどいことです。毎日が何をやっていいかも分からず、自分の無力を感じる毎日でした。

そして、やっぱり自分が好きで自信もあり、色々と経験もしてきたリサーチの世界に戻りたいという思いが強くなりました。

人生は面白いもので、捨てる神あれば拾う神もあるんですね。悶々とした生活を半年ほど過ごした頃に、ネットリサーチを始める切っ掛けがやってきました。

2011年8月 6日 (土)

マイボイスコムの生い立ち

当社は伊藤忠系シンクタンク(CRC総合研究所:現 伊藤忠テクノソリューションズ)の社内ベンチャー制度で1999年にできた会社です。社内ベンチャーの会社ってあまりないと思いますので、少し紹介させて下さい。

私が15年ほどリサーチャーとして働いていたCRC総合研究所は、伊藤忠商事や第一勧業銀行が主な株主で、科学技術計算、情報システム、シンクタンクを主な事業とする会社でした。設立は1958年と古くて、最初は伊藤忠電子計算という社名でした。

従業員は1,000人ほどで、2002年には東証1部になりました。そして、2006年に兄弟会社の伊藤忠テクノサイエンスと合併して、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)という会社になっています。

リサーチは労働集約的で、業務が個人のノウハウに依存するし、なかなか生産性向上が図りにくい仕事です。情報システムなどと比べると収益性が低く、大会社の経費を負担すると利益が出すのが難しいという課題がありました。

また、担当役員はリサーチなどやったことのない元商社マンとか、元銀行マンが3年おきに変わります。ある時に会社の方針で、50人の組織を一気に120人位まで拡大したのを切っ掛けに、大きな赤字部門になってしまいました。

しかし、現場には全く危機意識がありません。親会社があるし、大赤字の原因も親会社から来た役員がやったことでしし、赤字でもシンクタンク部門はなくならないと思い込んでいました。何とか黒字にしようという機運もなく、大きな赤字は続きました。

それから数年後に新しい社長が伊藤忠商事から来て、「集中と選択」、「IT事業に特化する」という経営方針が出されて、シンクタンク部門はリストラされることになりました。

シンクタンク部門で働いていた100人ほどの社員は、社内異動や退職や解雇で、あっという間にバラバラになり、その当時はA社長は本当に酷いことをする経営者だと思ったものです。

でも、その後、A社長と直接接する機会もでき、自分も会社を経営する立場になって考えると、上場企業の社長としては適切な経営判断だったと思いますし、ずいぶんと悩み苦んだのだろうと思います。

リサーチの仕事は「生活者の声をしっかり市場に反映させる」、「国民や住民の意見を行政に反映させる」という重要な社会的役割があります。

そして、リサーチャーは、社会の先端の情報に触れることができ、お客様の課題解決に係わることができ、自分のノウハウや創意工夫、熱意でよい仕事ができる。面白くて遣り甲斐のある仕事です。

しかし、個業の集まりで規模の効率化が働きにくいため、大きな会社が取組むには難しいフィールドだったのかもしれません。

〇伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)の沿革

http://www.ctc-g.co.jp/corporate/history.html

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2011年7月30日 (土)

課題6) データクリーニングの欠如

回収した個票にはどんな調査方法でも勘違いの回答もありますし、回答に不備のあるものです。

また、モニターの1部には、とにかくポイントが貯まればよいという登録者もおられますので、データクリーニングはしっかりやらなければ、お客様に責任あるデータをお届けすることはできません。

しかし、インターネット調査会社の中には回収後のデータクリーニングをしていないところや、十分な確認をしていないところもあるようです。

データクリーニングをしっかりやるためには、せっかくコストをかけて集めた回答を削除しなくてはいけませんし、ロジックチェックや、目視でのチェックにかなりの時間(=作業コスト)がかかります。

でもこのデータクリーニングにかける時間とコストは、必ず必要なものです。

当社の場合は、48時間の基準で回収を行い、ご契約の110%の回収(1,000件回収のご依頼で1,100件の回収)を行い、短時間回答者のカット、ロジッックチェックでのカット、目視での不自然な回答のクリーニングを、どんなに忙しくても必ず実施しています。

そして、お客様から「他社に頼んだデータがどう見ても変なので取り直したい。」、「クリーニングもしていないデータを納品されてしまって困っている。何とかならないか。」というご相談を何度も受けています。

回答しにくて負荷の多い調査票を、回収率の低いパネルに、極端に少ない謝礼で調査を依頼し、短時間で回収を終えて、5)データクリーニングも行わないで集計すると、回答データには2~3割の不備なデータが入っている可能性が高いので注意が必要です。

私たちリサーチ会社は、社会的な役割として、お客様にしっかりしたデータがお届けできる様に、品質管理にもっともっとしっかり取組むべきだと思います。

 

〇パネル管理とデータークリーニングの徹底

http://www.myvoice.co.jp/feature/

〇モニターとデータの品質管理の対策

http://www.myvoice.co.jp/service/quality.html

2011年7月23日 (土)

課題5) 回答負荷とウェブ制御

インターネット調査は回答がしやすく、紙に書く郵送調査や、人に話す面接調査と比べても負担は少ないし、FAもメールを打つ感覚で簡単に書けるのが良いところです。

それでも、モニターが集中して回答いただけるのは15~20分が限界です。ある調査によると、回答時間が20分、25分になると途中離脱者が増えるといいます。

しかし、お客様はせっかくなので、あれもこれも聞いておきたいということになり、これはこういう答えであろうとかという様な主観的な調査票になっていることもあります。それを冷静で客観的な立場で、分かりやすく、答えやすい調査票を作るのがリサーチャーの役割といえます。

しかし、明日の午後に調査票案の原稿を入れるので、夕方から回収を始めて欲しい、というスピードで業務を進めると、その様な役割を果たすのが難しくなってしまいます。

今はメールと添付ファイルが中心ですが、それでも調査票の確認に1~2日ほどの日程を設けて、お客様と担当のリサーチャーが対面でやり取りをするだけで、だいぶ答えやすい調査票になると思います。

それから、「これはどうかな??」と最近感じるのが、マトリクス設問と、ウェブ制御の過度な利用です。

マトリクスにすると設問数が減ってコストが減らせるため、蜂の巣の様な調査票を作られるケースも見られます。これだと回答者は見るだけでうんざりしてしまい、ちゃんと答えて頂けないでしょう。

また、ウェブ制御が強すぎると、「この中には該当がないのに選べというの??」、「良く分からないから答えられないのに何で答えなくてはいけないの??」、という回答者の負荷になってしまいます。

これまでは「分からないも答え」、「未回答も1つの答え」という思いでデータを見ていたと思います。そういう回答者本位の調査にして行くことも、大切なことではないでしょうか。

2011年7月18日 (月)

課題4) 謝礼経費の大幅削減

モニターがアンケートに答えてくれるのは、謝礼が貰えるからだけではありません。自分の意見や回答が製品やサービスとなって帰ってくる、社会に反映されると思うから、一生懸命に考えて答えてくれていると思っています。

当社ではそれを「生活者の言いたいニーズ」と言っていますが、欧州ではアンケートに謝礼がなく、自分の意見が言えるのがインセンティブなのだと聞いたこともあります。

郵送調査の謝礼は、「500円のテレフォンカードか図書券」が相場でした。ネットリサーチは郵送調査と比べて負担が小さいので、200~300円の謝礼が丁度良いのではないでしょうか。

でも実際のネットリサーチ市場では、1問が1円とか2円を基準にしているところがあり、30~40問のアンケートで30~80円の謝礼ポイントが標準となっています。また、10問ほどの予備調査で2~3円という会社もあります。

そして、あるインターネット調査会社の謝礼は1ポイントが1円ではありません。1ポイントが0.04円で「謝礼が1ポイント」のアンケートもあるようです。1回の謝礼が0.04円、たったの「4銭」でアンケートに答えてもらっているんですよね。

この謝礼であれば1万人にお答えいただいても、400円のコストにしかなりません。そして、これが相当な価格競争力になってインターネット調査市場に帰ってきています。

当社は当初、1回あたり200~300円の謝礼ポイントを設定していました。でもインターネット調査の製造原価に占める謝礼ポイントの比率は大きく、徐々に引き下げざるを得なくなり、昨年から業界水準の「1問=2円」まで下げざるを得ませんでした。

アンケートは、モニターの方にそれなりの時間をいただいて、貴重なお知恵をお貸しいただいているので、そのことに対する感謝と礼儀にふさわしい謝礼を負担すべきだと思います。

適切な謝礼をお支払いし、お客様からも正当なコストとして認めて頂ければ、モニターの裾野も広がり、もっと高い回収率も確保できて、より良い情報が集められるようになるでしょう。

2011年7月17日 (日)

課題3) 多頻度回答

私がこれはどうなのかな?、と思っている課題の1つが「多頻度回答」です。

パネルを使った調査は、以前も郵送調査やFAX調査、電話調査で行われていましたが、その頃は1人のモニターには月に2、3件以上は行わない、そして、2~3年したら入れ替えるというのが常識だったと思います、

そして、多頻度回答が良くない理由としては、以下の様なことが言われていました。

1)モニターが回答慣れをしてしまう。

2)多くの調査に答えることで特定分野について学習してしまう。

沢山の調査に継続的に答えていると、そのモニターの方は一般的な生活者ではなく、こう答えて欲しいのだろうとか、前の調査で答えたあのことかな、と考える「プロの回答者」になってしまい、普通の生活者と異なる回答データになってしまう懸念があります。

当社ではパネルの規模に対して案件数が少ないため、平均すると1人のモニターは月に1、2件しか回答していませんが、ある大手のネットリサーチ会社では、「1人のモニターに平均で1日4件の調査を依頼している」と聞いています。

1日4件ということは1人のモニターに「年間で1,000件の調査」ということです。

多頻度回答でどの程度、回答がずれるかは検証はできていませんが、これまでのリサーチ会社の常識では、信じられない量のアンケートに答えているモニターことになります。

多頻度回答は良くないという考え方自体がもう古いのでしょうか???

 

2011年7月16日 (土)

課題2) 短時間での回収

お客様にとって実査の時間が短くて、すぐに回収データや集計値が使えるというのは魅力的なことだと思います。

そして、インターネット調査会社によっては、夕方に調査票案をもらえれば、翌日の午前中にはクロス集計まで納品できるという提案をしているとこもあるようです。

でも午後1番で調査票案を貰って準備をしても、回収開始は夕刻から夜になります。そして、その集計表を翌日の午前中に納品するには、回収時間は12~13時間が精一杯になるでしょう。

また、深夜から早朝の回答者は少ないため、実質的な回答時間は4~5時間しかありません。

ある時間帯に答えられる人と答えられない人では、個人の意識や消費行動にも違いがあるので、あまり短い回収時間になると回答データが偏って、とても危険なデータになってしまいます。

当社では自社で回収実験を行い、回答意向者の95%以上が答えている「48時間での回収」を基準にして、属性別に細かくサンプル数を設定しています。

また、当社と業務提携しているインテージさんも、「最低でも24時間以上でする」というのを最低限の品質基準にしているそうです。

夕刻から回収して翌日の午前中には集計納品できるというのは、一見便利で素晴らしいサービスのようですが、データの品質を考えれば、適切ではありません。

〇当社パネルの回収時間と回収率の実例

http://www.myvoice.co.jp/feature/quality1211.pdf

 

 

2011年7月14日 (木)

課題1) 打ち合わせ時間の不足

インターネット調査ではこれまでの従来型調査と比べて、調査期間が大幅に短くなりました。そして、これまで数週間の単位で計画してきたリサーチが、数日、数時間単位になっています。

そのため、お客様とリサーチャーの打ち合わせ時間が十分に取れずに、コミュニケーション不足のまま実査に入ってしまうのが課題だと感じています。

従来型調査には大変な時間とコストがかかり、やり直すことなんて出来ませんでしたので、お客様とリサーチャーが何度も会って、打ち合わせをしながら課題とゴールを共有し、調査設計や、分析軸を決めていました。

でもインターネット調査の世界は、午前中に調査票案を送るので、その日の夕刻から回収を始めたい、というような慌しいスケジュールの調査もかなりあります。

打ち合わせをする時間もなければ、リサーチャーが何のための調査で、何に気をつけて、何がゴールかも、十分に理解できないまま作業に入ることになります。そのため、お客様に対する知恵出しや、サービス対応が十分できないことも増えているように感じています。

あと2日間の日程と、直接会って打ち合わせのできる若干の費用がいただければ、もっとサービスの質を高めることができるでしょう。

インターネット調査会社のリサーチャーも、お客様のお役に立ちたいという気持ちで働いています。

その気持ちや専門性がもっと発揮できる環境にして、お客様とリサーチャーがしっかりベクトル合わせを行い、知恵を出し合えることが大切なのではないかと感じています。

 

 

2011年7月 9日 (土)

インターネット調査の課題

インターネット調査は、早くて、安くて、インターラクティブ性に優れ、画像や音声も使えるし、レアサンプルの意見も聞くことができるし、とっても便利で機能的な調査手法です。

でも色々なリサーチ会社が、色々な考え方や運用方法でインターネット調査を提供しているため、多くの問題が生じています。

「意思決定への貢献度」が下がり、「顧客満足度」が低下している原因としては、以下の様なことがあると感じています。

1)お客様との課題共有の不足

2)短時間での回収

3)多頻度な調査依頼

4)謝礼ポイントの大幅な削減(低ポイント)

5)過度な回答負荷とウェブ制御

6)データクリーニングの不備、欠如

MRは目に見えない情報を扱っているサービスですので、その品質は目に見えず分かりにくいところがあります。

でも問題のあるデータを分析していくと、矛盾する回答が多かったり、どう見ても市場と乖離した結果が出て、本当にこの調査結果をもとに判断して良いのか??、と不安と不信を感じてしまうことになります。

できるだけ代表性のあるデータを取るために最大限の努力をすることはリサーチ会社の責務だと思いますが、このあたりの認識がインターネット調査の世界では、ストンと抜け落ちてしまった感があります。

インターネット調査市場の課題について、日頃感じていることを少しづつお伝えしたいと思います。

 

〇マイボイスコム http://www.myvoice.co.jp/

 

2011年7月 2日 (土)

優位性5) 回答時間の指定

郵送調査は2週間から3週間の回収期間が必要です。訪問留め置きでも調査員が来週取りに来るのでそれまでにご記入下さい、という様な依頼になります。

これらの方法だと回答の「日時」を指定することはできませんが、インターネット調査であればある特定の日や特定の時間に答えてもらうことができます。

当社でよくやっているのは「新聞広告の評価」です。例えば来週の日曜日に読売新聞と朝日新聞の朝刊に1面広告を載せるので、その効果を把握したいというような調査になります。

この場合は、同新聞の購読者を予めパネルから抽出しておいて、日曜日に朝刊を読み終えた13時頃に依頼メールをお送りして、「今日は〇〇新聞の朝刊をお読みになりましたか・・・」、「その新聞で〇〇の広告をご覧になりましたか」、「この広告をご覧になって感じたことは・・」という様な調査を行います。

それから、「日記調査」というものがあります。

これは2週間くらい毎日、何時に何をしたのか、どのメディアに接触したのか、どの広告を見たか、あるカテゴリーの商品を何時ごろどこで買って、どの様に使ったのかなどを、事前に了解をいただいたモニターから毎日答えてらう調査です。

これなどは記憶がはっきししている、当日の夜10時から翌日の朝の9時までに回答いただく様な設計にしています。

あまりモニターの方に負担をかけ過ぎると良くありませんが、何日の何時頃答えて下さい。というお願いができるのもインターネット調査ならではないでしょうか。

2011年6月30日 (木)

優位性4) 音声や動画の活用

調査に音声や動画や、サイト情報を使えるのも調査の対象範囲を広げることになりました。

動画はテレビCMの事前のクリエイティブ評価や、事後の純粋想起の後に動画をストリーミングで出して助成想起でもう1度答えてもらう様な場面でよく使っています。

また、ある回答をいただくのでサイト上に出ている説明や動画を見ていただいたり、その流れで、特定のサイトを見て使ってからサイトの評価や改善要望を聞かせてもらう「WEBサイト評価」の様な調査もメニュー化しています。

この様な動画を見て頂くテレビCMの評価や、実際のWEBサイトを見て頂く調査などは、以前であれば銀座や赤坂の会場に集まってもらって回答する、会場テスト(CLT)でしかできませんでした。

静止画だけでなく、動画や音声を調査票に埋め込むことができ、その画像や音声を聞いてからでないと設問に答えられないような設定もできますので、わざわざ集まっていただかなくてもテレビCMやWEBサイトの調査をすることもできます。

こんな音声や、動画、サイトの活用もインターネット調査の特長だと思います。

〇広告調査

http://www.myvoice.co.jp/menu/ad.html

〇WEBサイト評価調査

http://www.myvoice.co.jp/menu/web.html

プロフィール

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Takai kazuhisa

伊藤忠系シンクタンクの社内ベンチャーで、1999年にネットリサーチ会社のマイボイスコムを立ち上げて社長をやっています。会社を作ることより続けること、良い会社を目指して経営することの難しさ日々感じながら奮闘している毎日です。夜は神田や神保町あたりの居酒屋に出没し、休日は自然散策やアウトドアを楽しんでいます!